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No.16360 グラスゴー アセイオフィス ダブル ブライトカット ヴィクトリアン スターリングシルバー ティースプーン
長さ 13.1cm、重さ 15g、ボール部分の長さ 4.3cm、最大幅 2.6cm、ボールの深さ 6.5mm、柄の最大幅 1.25cm、1885年 グラスゴー アセイオフィス、八千五百円

彫刻の様子から感じることは、シルバーウェアの彫りというよりも、クロスなどの装飾品といった雰囲気が伝わってくる、不思議な風情のスターリングシルバー ティースプーンです。 15グラムと持ちはかりがあって、しっかり出来たヴィクトリアーナであるところも好感が持てます。

柄に施された手彫りのエングレービングが凝っていて、表情豊かなヴィクトリアン アンティークに仕上がっています。 エッジ周りの装飾ライン内側をルーペで見てみると、ブライトカットで小さな四角彫りを施した上に、鍵彫りを加えて仕切ることによって、四葉ユニットを構成させているのが分かります。 あるいは、スプーンの周囲をブライトカットで二重に巻いてダブルブライトカットとし、さらに鍵彫りで仕切って装飾を施した彫刻とも言えましょう。 このエッジ周りの装飾がかなり幅広で、2ミリの幅が取られていることから、ゴージャス感が増しているように思います。

内側の繊細なウェーブパターンの彫刻も綺麗です、こちらもルーペで詳しく見てみると、手仕事の丁寧さが嬉しく思えるアンティークです。 銀職人さんが彫刻刀を振るった向きまで、その様子が窺い知れて、そういうところにも親しみが湧いてくるハンド エングレービングになっています。 波模様モチーフにはContinuation(続いていくこと)や Eternity(永遠)という意味合いが象徴されており、ヴィクトリアンからエドワーディアンの頃に好まれたクリスチャンモチーフでありました。

ブライトカットは18世紀の終わり頃から、英国においてその最初の流行が始まりました。 ファセット(彫刻切面)に異なった角度をつけていくことによって、反射光が様々な方向に向かい、キラキラと光って見えることからブライトカットの呼び名があります。 この装飾的なブライトカット技術が初めて登場したのは1770年代でしたが、それは良質の鋼(はがね)が生産可能となってエングレービングツールの性能が向上したことによります。

裏面のホールマークは順にメーカーズマーク、ヴィクトリア女王の横顔マークでデューティーマーク、1885年のデートレター、スターリングシルバーを示すライオン ランパント、そしてグラスゴー アセイオフィス マークです。

ヴィクトリア時代にはティースプーンとして使われた品ですが、全長が13センチ超にボール部分の長さが4.3センチもあり、実際のところ現代的な感覚からはティースプーンとしてはかなり大きい感じです。 この品のサイズは通常のティースプーンの範疇を超えていると思いますので、普段使いの一本として、デザートスプーンやプリザーブスプーンとしてもお使いいただけるでしょう。 また、お茶の席でティースプーンとして見かけると、その存在感が印象的で、裏面のブリティッシュホールマークとあわせて、話題性のあるアンティークとなりましょう。

今から百三十年近く前に作られたアンティークとしての古さと、あまり見かけないことからレアものと言ってよい、スコットランドのグラスゴー アセイオフィスで検定を受けた品であることもポイントです。

英国のホールマーク制度にあっては、ロンドン、シェフィールド、バーミンガムのアセイオフィスの役割が大きくて、三つを合わせたシェアは9割ほどになるでしょう。 逆に言えば、それ以外のアセイオフィス マークが刻印されたシルバーウェアは珍しいので、そこにレア物の価値を見出すコレクターがいるのです。

グラスゴー アセイオフィスで検定を受けたシルバーウェアは、ホールマークにも他と違った特徴がありますので、この機会にご紹介しておきましょう。 英国シルバーにおいて銀純度92.5%を示すスターリングシルバー マークは、普通はライオンが歩いている刻印で、「ライオンパサント(Lion Passant)」と呼ばれます。 ロンドン、シェフィールド、バーミンガム他のシルバーウェアをお持ちの方なら、おなじみのマークです。 ところがスコットランドではこれが、ライオンが後ろ足で立ち上がった姿になって、「ライオンランパント(Lion Rampant)」と呼ばれます。 英国アンティークシルバーの知識として覚えておかれてもよいでしょう。 1800年代からグラスゴー アセイオフィスが廃止された1964年まで、グラスゴーのシルバースタンダード マークは、このライオンランパントだったのです。

それから、グラスゴー アセイオフィスマークをルーペでご覧いただくと、樹木のてっぺんに鳥がとまっていて、樹の右サイドにベルが下がっていて、樹の下には魚がいるマークが見て取れます。 この「鳥、木、鐘、魚」がグラスゴーの象徴なのです。

キリスト教の聖人St.ムンゴがグラスゴーの街をつくったと言われていて、彼が起こしたと伝わる四つの奇跡をうたった以下の詩にちなんだデザインがグラスゴーのコート オブ アームズになっているわけなのです。

Here's the bird that never flew
Here's the tree that never grew
Here's the bell that never rang
Here's the fish that never swam

この品が作られたヴィクトリア時代の背景については、英国アンティーク情報欄にあります 「14.Still Victorian」や「31. 『Punch:1873年2月22日号』 ヴィクトリアンの英国を伝える週刊新聞」の解説記事もご参考ください。 

グラスゴー アセイオフィス ダブル ブライトカット ヴィクトリアン スターリングシルバー ティースプーン



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