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No.16396 エドワーディアン スターリングシルバー Forget-me-not(忘れな草) モチーフ ティースプーン
長さ 11.4cm、重さ 13g、ボール部分の長さ 3.5cm、柄の最大幅 1.3cm、柄の最大厚み 2mm、1901年 シェフィールド、Henry Wilkinson & Co作、七千円

ヴィクトリア時代が終わり、エドワーディアンの時代が始まった年に作られたスターリングシルバー ティースプーンです。 柄元に三つと柄先に一つの小花が可愛らしく、裏面も同様なデザインです。 小花は五つの花びらの付き方からみて、当時の定番ともいえる Forget-me-not(忘れな草)でありましょう。

13グラムと持ちはかりがあり、銀が厚めな作りとなっており、手にした時のしっかり感は好印象です。 また、両面にわたって装飾が施されているので、やはり見た感じがゴージャスな雰囲気に仕上げっており、このアンティークのポイントになろうかと思います。 このあたりは裏面に刻印されたレジスター番号と関連するものでしょう。 

ボール裏面には四つのブリティッシュホールマークがしっかり刻印されているのもよいでしょう。 ホールマークは順に、「Henry Wilkinson & Co」のメーカーズマーク、シェフィールド アセイオフィスの王冠マーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1901年のデートレターになります。 

英国のシルバースミスの歴史をたどると、ヴィクトリア時代に始まった銀工房が多い中で、「Henry Wilkinson & Co」はかなり古い歴史があって、1760年創業の老舗です。 1851年の万国博覧会には多くのシルバーウェアを出品して、評判のよいシルバースミスでした。

写真二番目をご覧ください。 柄の中ほどに何か刻まれているのが分かるかと思います。 これは「Rd.356605」とあるもので、イギリスのパテントオフィスにデザイン登録したことを示すレジスター番号です。 このアンティークの作者は、わざわざデザインをパテント登録して特許を取っていることから考えても、自信を持って世に送り出した、ヴィクトリアン デザインの一つだったろうと理解できます。 パテント登録をした時の申請書なりが見つかれば、この小花が何であるとか、デザインの趣旨など、アンティークの背景がさらに分かるかも知れません。

この品が作られた当時の時代背景については、「英国アンティーク情報」欄にあります「14. Still Victorian」の解説記事もご参考ください。

わすれな草はヨーロッパを原産とする、薄青色の小花が可憐な一年草で、信実とか友愛のシンボルとされます。 花言葉は「Forget-me-not」そのもので、「忘れないで」です。

「Forget-me-not」はイギリスのフィールドでよく見られる花で、昔から咳止めなどの薬草としても使われてきましたので、人気があって役に立つ花です。 イギリスの勿忘草は、細かく言うと四つほど種類があります。 野原で一般的なのは「フィールド勿忘草」、森の中で見られる「ウッド勿忘草」はやや大型です。 イエローからブルーに色が変わっていくのが「チェインジング勿忘草」で、ふさが特徴の「タフティド勿忘草」もあります。

日本語で「忘れな草」を「勿忘草」と書くと、漢文調な雰囲気で古っぽく見えて、万葉集や古今和歌集にも出てきそうな日本古来の野草のようにも感じます。 実際には「Forget-me-not」が日本にやってきたのは、百年とちょっと前のことで、「勿忘草」or「わすれな草」と訳語の日本名が付けられたのは、日露戦争があった1905年のことでした。

それでは、イギリスではどうかと言うと、これまた日本と同じ事情で、実は「Forget-me-not」という名前は舶来品の訳語でありました。 「Forget-me-not」という花の名は、元々は中世ドイツの伝説が起源で、ドイツ語の「忘れないで!」というのが、根っこになって世界中に広がっていったのです。 この伝説をもとにしたポエムをイギリス人のサミュエル・コルリッジが書いたのが1802年でありました。 そしてこれが英語の中に「Forget-me-not」が受容されるきっかけになったのです。

ドイツ起源の「勿忘草」がデンマークやスウェーデンに伝わり、そしてフランスに伝わり、イギリスに入ってきたのが1802年、それから百年ほどして日本へ、言葉の伝播の歴史も興味深く思います。

エドワーディアン スターリングシルバー Forget-me-not(忘れな草) モチーフ ティースプーン


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