英国 アンティーク 英吉利物屋 トップ(取り扱い一覧)へ 新着品物 一覧へ アンティーク情報記事 一覧へ 英吉利物屋ご紹介へ
No. 16324 イギリス郵便局 OZ(=オンス)単位 スプリング バランス スケール
両端のフックを含む長さ 18.5cm、重さ 124g、本体部分の長さ
11.8cm、横幅 3.0cm、厚み 1.6cm、1930年代頃、英国
SALTER社製、一万二千円
イギリスの郵便局のことをロイヤルメールと呼びますが、この品は1930年代頃にロイヤルメールで使われていたスプリング バランス スケールです。 上部にメーカーの名前と共に、「LETTER
BALANCE」の表示があって、単位は「OZ(=オンス)」であることが分かります。
21世紀の今日では、どこのポストオフィスに行っても、このような吊り下げタイプの秤を使っているところは見たことがありません。 ノスタルジックなアンティークの味わいが伝わってまいります。
イギリスにおける郵便の歴史は、社会史的にもとても興味深いもので、写真のロイヤルメール御用達 アンティーク スケールを眺めておりますと、いろいろと思うことがあります。
昔のポストオフィスは朝早くから夜遅くまでやっていました。 そういえばシャーロック・ホームズの探偵小説の中でも、夜遅くに電報を打つ場面があったような。 そんなわけで、写真の「OZ(=オンス)」秤もずいぶん働いたろうと考えられます。
デイビット・スーシェ主演のポワロシリーズにある『The
ABC Murders』を見ていましたら、ポワロとヘイスティングスが夕食中に、その日最終の郵便配達が来る場面がありました。 このデイビット・スーシェのポワロシリーズは、1930年代の英国が舞台に設定されており、ディテールにこだわって見ていくと、いろいろとアンティークを楽しむ上での発見があります。
この郵便の配達はかなり夜遅くに来ていることは興味深く見ました。 原作で確認してみましたら、「It
was on Friday that ABC's third letter came.
Evening post arrived about ten o'clock.
」とありました。 当時は一日のうちに何度も郵便配達があって、最終便は夜の十時に配達があったなんて、ちょっと驚きです。
『The Victorian House(Judith Flanders著)』という本によると、ヴィクトリア時代のイギリスにおいては、ものすごい数のポストカードが行き来していたようです。 当時のイギリス都市部では、郵便配達が一日に五、六回に及んでいました。 職場で働く旦那さんが、ランチタイムの頃に、奥様宛に「今日の帰宅は午後六時の予定です。Love」とか書いてポストカードを送れば、夕方までに届くという状況だったのです。
電話が広く普及する前のことで、多くの人たちにとって、ちょっとした用事を伝える手段として、郵便システムがこれほどに発達していたのです。 ヴィクトリア時代でもまだ前期にあたる1851年の新聞『The
Times』に掲載された投書の例がありました。 それによると、ロンドンで午後一時半に投函された手紙が、その日の午後四時になっても、3キロ離れた宛先に届かなかったという苦情だったのです。 逆に言うと、当時のロンドンではそれが当たり前だったわけで、百五十年前のイギリス郵便、恐るべしだったのです。
知り合いのイギリス人のご家庭で、アンティークのスプリングバランス
スケールが飾りとして掛けられているのを見て、なかなかいいなと思い、気に入ったバランス スケールを集めるようになりました。 ブラスという素材はパブのカウンターとか、マナーハウスのドアノブなど英国の昔ものには欠かせない素材で、磨き上げられたブラスの光沢は落ち着きと品があって、英国風を感じさせます。
重さの単位はグラムが当たり前の日本人から見ると、イギリスの重さの単位はむちゃくちゃで、重さを量る物ごとに単位が違うような傾向があります。 食品の重さはポンド表示が普通で、人の体重はストーンという単位で会話が進んでいきます。 体重がSeven
and half Stoneだなんて言われても、さっぱりピンとこないのですが、これは約47kgなのです。
そういえば以前にはNEWTON単位のイギリス製バランススケールをご紹介したこともありました。 そして今回の郵便物については単位がオンスということで、いろいろな物ごとに重さの単位が違うという思考回路はいったいどういうものなのか、不思議なところです。 ちなみに1オンスは28.35グラムになります。
SALTER社は1760年にウェスト ブロムウィッチで創業した秤メーカーですが、今日の英国でも依然としてリーディングカンパニーであり続ける240年の歴史を誇るメーカーです。 イギリスにはずいぶんと長い歴史を持つアンティークな会社が結構あって、例えば歴史の勉強で習った東インド会社などは創業1600年、歴史上の存在であるだけでなく、今でも英国で営業している400年の歴史を持つアンティークな会社です。 英国アンティーク情報欄の「20.アフターヌーンティー」の解説記事もご参考まで。
ブラスのお手入れについては、ブラス専用の磨き液がありますので、ご紹介しておきましょう。 私はReckitt
& Colman社のBrassoという磨き液を使っています。 スペイン製ですが、なぜか缶の表には英国王室御用達のQE2マークがあります。 イギリス人はブラス好きで、昔から英国風には欠かせない素材であったことが関係あるのかも知れません。
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