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20. アフタヌーンティー : 英国紅茶の歴史 と モートスプーンの謎 
アンティークなマナーハウスでのアフタヌーンティーをご紹介し、イギリスにおけるティーの歴史を振りかえってみます。 さらに、ティーにまつわるアンティークとして、モートスプーンという今日では作られていない銀のアンティークスプーンがあり、昔のお茶を知る手掛かりにしてみます。


ハンブリーマナーはロンドンから北へ40kmほどのウェアという街にあります。 25万坪という広大な敷地を木立の奥に進んでいくとヤコビアン様式のお屋敷が立っています。 ヴィクトリア後期のマナーハウスですが、今ではホテルになっていて、かつての大広間でアフタヌーンティーが楽しめます。

ラプサンスーチョンやアッサムなど好みのお茶を選んで、フル アフタヌーン ティーを注文すると、サンドイッチ、パウンドケーキ、ペイストリー、スコーンにクロチットクリームが三段トレーに盛られて運ばれてきます。 銀のティーポットにはリーフティーがたっぷりと、そしてホットウォータージャグが添えられているのも嬉しいところです。

オークホールと呼ばれる広間の天井はとても高く、優雅で落ち着いた雰囲気です。 ゆったりとしたソファに座って、往時のマナーハウスでの暮らしに思いを馳せながらお茶をいただいていると、アフタヌーンティーとはなんとも英国的で、この国のエッセンスのように思えてきます。



ところが、アフターヌーンティーは英国においてもそれほど古くからのものでなく、実は200年ほどの歴史があるに過ぎません。 英国ティーの歴史を知ることは、アンティークを知ることにも繋がりますので簡単に振りかえってみましょう。

英国人が初めてティーを知った経緯には日本との関係があります。 東インド会社の長崎平戸駐在員が1615年に本国に送った手紙の中で、ティーを伝えたことがきっかけでした。

しかし英国でティーが愛されるようになるまでには、それからさらに年月が必要でした。 17世紀後半に国王チャールズ二世のお妃になったポルトガル王室出身のキャサリン王妃が、祖国の習慣であったティーを英王室にもたらしました。 英国より先に東方のマカオに足場を築いていたポルトガルは早くからティーを輸入していたのでした。 ティーはその後上流階級で人気となり、19世紀初めになってべドフォード公爵夫人によってアフターヌーンティーが始められたとされています。

当時のティーはたいへん高価な貴重品でしたので、銀製のティーキャディーには鍵までかかる仕掛けになっていました。 ティーにまつわるアンティークとして、モートスプーンという今日では作られていない銀のアンティークスプーンがあり、昔のお茶を知る手掛かりになります。

モートスプーンは謎の多い代物です。 長い柄にはピアスト ボールが付いていて、反対側は先細で串のようになっています。17世紀後半から百年ほどの間作られていましたが、その用途については、いまだに議論が分かれています。 一つにはオリーブを取るのに使われていたとの説がありますが、少し根拠が弱いようです。 18世紀の茶道具セットにモートスプーンが入っていることがあるため、お茶に使われたとの説が有力ですが、いったいどう使っていたか、いまひとつ分かりません。 ティーストレーナーとして使ったと言う人もいますが、おそらく本当らしいのは、次のような説です。

英国でティーの習慣が始まった17世紀後半からしばらくの間、当時のお茶の品質はあまり良くなく、茶葉の大きさも大小入り混じり、ちりやほこりもかなり混じっていたようです。 ピアスト ボールに茶葉を入れてほこりを払い、ポットの中で詰まってしまう大きな葉を除く為に串の柄を使っていたというものです。

今では使われなくなってしまったアンティークの小道具から、昔の暮らしに思いを馳せるのは楽しいことです。 少なくとも、キャサリン王妃よりも、今日の私たちの方が良質のティーに囲まれている言えそうです。


(写真の右側にある挿絵がモートスプーンです。)

今回はもう一つ、ブラマー ティー コーヒー博物館をご紹介します。 このは博物館はテムズ川にかかるタワーブリッジを川下に越えた辺り、最近おしゃれな観光名所として注目を集める再開発エリア、バトラーズウォーフの一角にあります。 元倉庫街にひっそりという感じのたたずまいの博物館では、まずはお茶の歴史とばかりに中国、日本、オランダ、ロシア、そしてイギリスと国別に紹介されています。 日本のコーナーに缶入り緑茶の缶がずらりと並んでいるのにはおもわず笑ってしまいましたが、それはさておき、たくさんのティーポットやティーカップが紹介されていたり、お茶の歴史が分かったりと、楽しめます。

博物館のあるテムズ川沿いのバトラーズウォーフは、長い間大英帝国の紅茶の集積地として、船からの荷降ろし、保管、売買が行なわれてきた場所です。最盛期には一日に六千もの紅茶の大箱が取引されたとのこと。 そうした歴史を垣間見ると、セピア色の眼鏡越しに歴史で習ったあの東インド会社のティークリッパー船がテムズを行き交うのが見えた気がしてきました。

余談ですが、有名なお茶の種類であるアッサムやダージリンのティープランテーションを経営した「東インド会社」という世界史で習った会社があります。 かつては軍隊まで持つ会社を越えた統治機構としてインドを支配し、アメリカ独立戦争のきっかけとなるボストン茶会事件の原因を作り、中国でアヘン戦争を起しました。 これほどパワーがあった会社も稀なのですが、この会社は歴史上の存在であるだけでなく、今でも英国で営業しているアンティークな会社なのです。

(アンティークの専門誌 『オクルス』 掲載記事です。)

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