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No. 17031 アール・デコ スターリングシルバー ティースプーン with ピアストワーク SOLD
長さ 9.5cm、重さ 8g、ボール部分の最大幅 2.0cm、透かし柄の最大幅 1.3cm、柄の最大厚み 2mm弱、1943年 バーミンガム、 (6本あります-->4本あります-->SOLD)

今から70年近く前に作られたスターリングシルバーのティースプーンです。 ピストワークに特徴があり、直線的な幾何学デザインは、アール・デコの系譜上にある品と言ってよいでしょう。 ボール裏面にはメーカーズマーク、バーミンガム アセイオフィスのアンカーマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1943年のデートレターが刻印されています。

透かしが繊細で美しく、小振りで可愛い銀スプーンと思いますが、柄元あたりで銀の厚みは2ミリほどあって、銀が厚めなことは好印象です。 小振りサイズの割には、しっかり出来ていることには、ちょっと意外な感じもして、しかし考えてみると、そういうところはいかにも英国風と思うのです。

この品が作られた1943年は第二次大戦の最中になります。 英国は戦勝国とはなったものの、大変な時期であったことは間違いありません。 ロンドンはドイツから弾道ミサイルの攻撃を受けたり、爆撃機による空襲も頻繁にありました。 私の住むところはロンドンの北の郊外で爆撃の目標にはならなかったようですが、近所のお年寄りの話では、ロンドンを空襲した帰りの爆撃機が、残った爆弾を抱えていると重いので、帰路の燃料節約の為に落とし捨てていくコースに当たっていて、怖かったとのこと。 

とは言うものの、戦争最中の1943年に、茶道具のような不要不急の品を作っていたとは、当時のイギリスは結構余裕もあったんだなあ、とも思いました。 ただ、余裕で茶道具を作っていたかどうかは別として、イギリス人にとって、お茶はとても大事であることの証左かも知れません。

お茶とイギリス人といえば、こんな経験も思い出されます。 ある朝、駅に向かって歩いていたら、駅から戻ってくる人がいて、「Security Alert で、今さっき駅は閉まってしまった。あなたも家に帰ってお茶にした方がいいだろうよ。」と言われたことがあります。 セキュリティ アラートと言うのは、警戒警報のようなもので、不審物など見つかると駅が一時的に閉鎖されることがあるのです。 当該駅は閉鎖されますが電車自体は走っているわけで、日本的な感覚ですと、次に近い駅までバスなりタクシーで行ってでも職場に向かいそうに思うのですが、そうではなくて、「お茶にしよう。」と言うのが、なんとも英国風で、軽いカルチャーショックを覚えた記憶があります。

写真の銀ティースプーンが作られた当時のイギリスについて、もう一つご紹介しておきましょう。 1946年4月に発表されたエセル・ローウェル氏の『現在の意味』という論文に、第二次大戦中のロンドンにおける空襲後の一婦人の話があります。

『爆撃の一夜が明けてから、一人の婦人が砲撃された我が家の戸口に幾度も行って、心配そうに往来をあちこち見ていた。 

一人の役人が彼女に近づいて、「何か用ならしてあげましょうか。」

彼女は答えた、「ええ、どこかその辺に牛乳屋さんはいませんでしたか。うちの人が朝のお茶が好きなものですから。」

過去は敵意あり、未来は頼みがたい、が、道づれとなるべき現在は彼女とともにそこにあった。 人生は不安定であった。 しかし、…… 彼女の夫は一杯の朝の茶をほしがった。』(引用終り)

「絶対的現在(=永遠の今)」にしっかり足をつけて立つという意味で、私はこのお話が好きです。 まずは、お茶を一杯、いかがでしょう。

アール・デコ スターリングシルバー ティースプーン with ピアストワーク

アール・デコ スターリングシルバー ティースプーン with ピアストワーク

アール・デコ スターリングシルバー ティースプーン with ピアストワーク

アール・デコ スターリングシルバー ティースプーン with ピアストワーク

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