英国 アンティーク 英吉利物屋 トップ(取り扱い一覧)へ 新着品物 一覧へ アンティーク情報記事 一覧へ 英吉利物屋ご紹介へ

No. 16790 マッピン & ウェブ スターリングシルバー ティースプーン 一部 SOLD
長さ 11.2cm、重さ 13g、ボール部分の長さ 3.7cm、最大幅 2.45cm、ボールの深さ 5mm、柄の最大幅 1.15cm、柄の厚み 2mm、1952年 シェフィールド、Mappin & Webb作、一本 八千五百円 (11本あります-->10本あります-->9本あります-->4本あります-->2本あります-->1本あります。)

もともと複数本あったものですが、最後の一本になりましたので、写真を撮り直してみました。

今から六十年以上前に作られたMappin & Webbのスターリングシルバー ティースプーンです。 柄のデザインはシンプルながらも、銀の厚みが感じられて好印象な品と思います。 ほとんど使われた様子がなくコンディション良好なティースプーンです。 銀工房は有名どころのマッピン & ウェブでありますし、こういう銀は機会があれば押さえておこうという感じで求めておきました。

柄先に向かうデザインは、シンプル系でありながら、ワンポイントの絞りアクセントが効いて品のよさが感じられ、Mappin & Webb のパターンブックにあるデザインの一つと思われます。 シルバーウェアを長く使っていくには、こういうタイプがいいという考えもあろうかと思うのです。 磨きぬかれたソリッドシルバーの輝きを楽しむのも、またよいのではと思わせてくれる銀のティースプーンです。

お客様から、なるほどと思わせていただいたお話がありますので、ご紹介させていただきましょう。 
『先日北海道では珍しい大型台風が通過し、短時間ですが停電となってしまいました。夜、仕方がないので古い灯油ランプを持ち出し屋内の照明としたのですが、以前手配いただいたティースプーンをランプの光にかざしてみたところ、ほの暗い明るさの中、スプーンのボウル内や彫刻の輝きにしばし見とれました。銀のアンティークには点光源の古い照明が合うようです。また昔の貴族が銀器を重用したのもうなずける気がします。』

私はアンティーク ランプ ファンで、早速に試してみたのですが、シルバーにアンティークランプの灯がほんのりと映って揺れているのを見ていると、なんだか心が落ち着くものでした。

裏面のホールマークは順に、シェフィールド アセイオフィスの王冠マーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、1952年のデートレター、そしてMappin & Webbのメーカーズマークです。 

このティースプーンが作られたのは今から六十年ほど前の1952年で、現英国女王エリザベス二世の即位の年にあたります。 いつもヴィクトリアンやエドワーディアンの品をご紹介することが多いので、半世紀ぐらいだと、新しいようにも感じるのですが、この品が作られた時代を振り返ってみると、やっぱりずいぶん昔だと思えてきます。 クィーンエリザベス二世即位当時の英国首相はあのチャーチルです、そしてこの頃にロンドンで起こったのが有名な「Great Smog」です。

1952年12月5日、ロンドンでは折りからの寒さの中、風が止み濃い霧がたち込み始めました。 この霧はそれから3日間ロンドンを覆うことになります。 寒さで人々が石炭ストーブをどんどん焚くものですから、霧の原因となる微粒子核が撒き散らされて、霧がどんどん深くなっていったのです。 ものすごい霧で、2〜3メートル先はおろか、伸ばした自分の指先さえはっきり見えなかったと伝えられています。 映画館や劇場でもドアの隙間から霧が入り込んで、スクリーンや舞台が見えず、キャンセルが相次ぎました。 そして濃霧による交通事故や不清浄スモッグによる呼吸器障害のために、ロンドンで四千人もの死者が出る大惨事となったのです。 

昔からロンドンと言えば、霧の街として有名でしたが、「Great Smog」は長いロンドンの歴史の中でも最悪の出来事となりました。 そしてこれを契機に数年後の1956年には清浄空気法が定められることとなったのです。 

石炭ストーブ時代の「Great Smog」のエピソードは今日では考えられない出来事ですが、この品が作られた六十年前という時代に思いをいたす興味深い手掛かりにはなるでしょう。

「Great Smog」は人々の記憶に残る大事件でありましたので、私の周りのシニアの方々に聞いてみても、「あの時はすごい霧で大変だった。」と、いろいろな思い出を語ってくれます。 皆さんもイギリス人シニアの方で知り合いがいらっしゃったら、聞いてみると興味深いと思います。

メーカーは言わずと知れた有名工房ですが、このシルバースミスの歴史をご紹介しましょう。

マッピン関連のアンティークを扱っていると、「Mappin & Webb」とよく似た名前の「Mappin Brothers」というシルバースミスに出会うことがあります。
「Mappin Brothers」は1810年にジョセフ マッピンが創業した工房で、彼には四人の後継ぎ息子がありました。四人は上から順にフレデリック、エドワード、チャールズ、そしてジョンで、年長の者から順番に父親の見習いを勤めて成長し、1850年頃には引退した父ジョセフに代わって、四兄弟が工房を支えていました。

ところが末っ子のジョンは、工房の運営をめぐって次第に兄たちと意見が合わなくなり、ついに1859年には「Mappin Brothers」を辞めて独立し、「Mappin & Co」という銀工房を立ち上げました。 以後しばらくの間、「Mappin Brothers」と「Mappin & Co」は「元祖マッピン家」を主張しあって争うことになります。

しかし最初のうちは「Mappin Brothers」の方が勢力があったこともあり、1863年には末っ子ジョンの「Mappin & Co」は「Mappin & Webb」に改名することとなりました。 Webbというのはジョンのパートナーであったジョージ ウェブの名から来ています。

「元祖マッピン家」問題では遅れをとったジョンでしたが、兄たちよりも商売センスがあったようです。 スターリングシルバー製品以外に、シルバープレートの普及品にも力を入れ、目新しい趣向を凝らした品や新鮮なデザインの品を次々と打ち出し、しかも宣伝上手だったのです。 ヴィクトリアン後期には当時の新興階級の間でもっとも受け入れられるメーカーに成長し、それ以降のさらなる飛躍に向けて磐石な基盤が整いました。

20世紀に入ってからの「Mappin & Webb」は、「Walker & Hall」や「Goldsmiths & Silversmiths Co」といったライバルの有名メーカーを次々にその傘下に収めて大きくなり、今日に至っています。 

また、「Mappin Brothers」ですが、時代の波に乗り切れなかったのか、1902年には「Mappin & Webb」に吸収されてしまっています。 ただ、その頃には三人にお兄さん達はとっくの昔に引退しており、後を継いだエドワードの息子さんも引退して、マッピン家のゆかりはいなかったようです。 そうこう考えると、ジョージアンの創業で、ヴィクトリア時代に二つに分かれたマッピンが、エドワーディアンに入ってまた一つの鞘に戻れたことはよかったのかなとも思うのです。

マッピン & ウェブ スターリングシルバー ティースプーン




イギリス アンティーク 英吉利物屋 トップ(取り扱い一覧)へ 新着品物 一覧へ アンティーク情報記事 一覧へ 英吉利物屋ご紹介へ