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No. 16333 ジョージ三世 スターリングシルバー オールドイングリッシュ パターン ティースプーン
長さ 12.2cm、重さ 12g、ボール部分の長さ 4.2cm、最大幅 2.55cm、ボールの深さ 6mm、柄の最大幅 1.2cm、1795年 ロンドン、一万円

このスターリングシルバー ティースプーンは今から二百十七年前の1795年の作で、英吉利物屋の扱い品の中にあってもかなり古い品になります。 二世紀以上前の古い銀スプーンであるにもかかわらず、ホールマークがどれもしっかり深く刻印され、磨耗もなく現在に至っていることはグッドです。 

ホールマークは順にメーカーズマーク、ジョージ三世の横顔でデューティーマーク、1795年のデートレター、そしてスターリングシルバーを示すライオンパサントになります。

写真二番目に見えるように、スターリングシルバーを示すライオンパサント刻印がはっきりしていて、Lion Passant Guardant(真正面向き)と分かるのも、アンティークとして興味深いポイントとなっています。

英国王ジョージ三世についてですが、1760年から1820年までのジョージ三世時代はイギリス史においても長かったので、アンティークにおいても、この時代の品には「ジョージ三世...」と接頭辞のように国王の名前を冠することが多いのです。 

二十一世紀に入り2012年ともなった今日から振り返ると、1900年代の品でもなく、1800年代の品でもない、1795年に作られているのは、やはり飛び切り古いアンティークという気がします。 そして、博物館に飾られるようなアンティークシルバーはいざ知らず、私たちが収集していけるアンティークシルバーウェアとしては、その出現頻度には1780年辺りにボーダーラインがありますので、その意味でも写真の銀スプーンの古さは一級品といえましょう。

大きな時代の流れのなかで、このアンティークの位置づけについては、英国アンティーク情報欄にあります「37. アンティークと歴史経済の大循環について」をご覧になってください。

写真のティースプーンのホールマークをルーペで詳しく観察してみると、ライオンパサントの口が開いているのが確認できます。 その意味するところは、ライオンパサントには二通りあることと関係があります。 アンティーク スターリングシルバーの知識として知っておいたら面白いでしょう。

1820年までのライオンは横歩きの姿で顔だけは正面を向いています、そして1821年以降は顔も横向きのライオンになるのです。 厳密に言うと、Lion Passant Guardant(真正面向き)と、Lion Passant Profile(横向き)と呼んで区別されます。 アンティークハントの際に、ルーペでライオンマークを調べてみて、こっちを向いていたらかなり古いという使い方が出来るわけです。

Lion Passant Guardant マークが大きめなら、両眼と真ん中の口が分かりやすいでしょう。 マークが小さい場合には、口の位置が目印になりましょう。 

ティースプーンでは一般に刻印も小さめになります。 このティースプーンの場合は、ルーペで観察してみると、真ん中に口が開いていることが分かります。 Lion Passant Guardant(真正面向き)が刻印されていることから、なるほどこれはかなり古いアンティークだと分かるのです。

英国の歴史は比較的安定していたことが特徴で、隣国フランスのように大きな革命や動乱を経験せずに今日に至っており、そのおかげもあってイギリスにはアンティークのシルバーが多く残っているとも言えます。 しかし、このティースプーンが作られた18世紀後半はイギリスにおいてもかなり世の中が荒れて、政治が混乱した時代でした。 一つには産業革命の影響で英国社会に大きな変化が起こりつつあって、ロンドンでは打ち壊しのような民衆暴動が頻発していたことがあり、二つには国王ジョージ三世がアメリカ植民地経営に失敗してアメリカ独立戦争を招いたことなどが混乱に拍車をかけました。 18世紀後半にロンドンで起こったゴードン暴動では死者が五百人を超える惨事となって革命一歩手前だったようです。 

さらに加えて海外からの不安定要因がイギリスを脅かし始めます。 1789年に始まったフランス革命は次第に先鋭化していって、ついに1793年には国王を処刑してしまうまでになりました。 このティースプーンが作られた頃は、おっかなびっくり隣国フランスの様子を窺いながら、当時のイギリスはいつ対岸の火事が飛び火してくるか、ひやひやものでありました。 もし英国史がそのコースを少し外していたら、このスプーンを今こうして見ることもなかったかもしれない、などと思ってみたりもするのです。

それから、柄先にホールマークを刻印することをトップマーキングと言いますが、1800年前後にロンドンで作られたティースプーン等の小物シルバーウェアのトップマーキングにおいては、ロンドン レオパード ヘッドの刻印を省略することが当時流行っていました。 このティースプーンにもロンドン アセイオフィス マークがありませんが、同時期に作られたロンドン物ではよく見かける傾向なのです。 おそらくロンドン中心思考がこうした習慣を生んだと思われますが、1830年ぐらいから以降は改まりきっちり刻印されるようになっていきます。

オールドイングリッシュ パターンについてはアンティーク情報欄にあります「4.イングリッシュ スプーン パターン」の解説記事を、またジョージ三世とデュティーマークについては、 「5.シルバーホールマークとジョージアンの国王たち」解説記事の後半もご参考ください。

ジョージ三世 スターリングシルバー オールドイングリッシュ パターン ティースプーン





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