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No. 15034 エドワーディアン スターリングシルバー ティースプーン SOLD
長さ 11.1cm、重さ 16g、最大幅 2.2cm、ボール部分の長さ 3.6cm、柄の最大幅 1.05cm、柄の最大厚み 2mm、1905年シェフィールド、John Round & Son Ltd.作、一本 四千円 (6本あります-->5本あります-->4本あります-->3本あります-->SOLD)

手にした感じ、銀が厚めのふっくら系 エドワーディアン スターリングシルバー ティースプーンになります。 ハンドエングレービングは繊細で美しく、三つ葉と扇の形が特徴的です。 扇は葉っぱと思いますが、あるいは、ジャポニスムのモチーフブックから得たファンパターンをヒントにしているかも知れません。

ルーペを使ってよく見ていくと、彫刻には様々な技法が駆使されており、単調でないところは、さすがに百年以上前のシルバースミス、匠の技を感じます。 また、全体として銀の質感からもたらされる重厚な雰囲気に特徴があるシルバーウェアで、私好みなエドワーディアン アンティークです。 ティースプーンでありながら、柄元あたりで2ミリの厚みはけっこうなものです。 

また、コンディション良好ながら、百年以上の時を経ている古さは、やはりアンティークとしての魅力になりましょう。 写真二番目に見える裏面のホールマークは順にシェフィールド アセイオフィスのクラウンマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、1905年のデートレター、そして John Round & Son Ltd.のメーカーズマークになります。 

メーカーのJohn Round & Son Ltd.はシェフィールドの大きなシルバースミスで、アンティークとして今日でもよく見かける有名メーカーの一つです。 ジョン・ラウンドによって1847年シェフィールドで創業され、当初はスプーンとフォークのメーカーでした。 職人技の素晴らしさとデザインの優雅さで、次第にその評価を確立して、息子のエドウィンをパートナーとして迎える頃には、銀器なら何でもこなすシェフィールドの大メーカーに成長していました。 第一次大戦を境にしてイギリスの国力が衰えていくと、多くのシルバースミスも衰退していった中で、John Round & Sonは1962年までシルバースミスとして仕事を続けていたというのも珍しい例と思います。

銀のアンティークテーブルウェアは、他のアンティークと比べると壊れにくいですし、お手入れ次第で綺麗に使っていけます。 以前に以下のようなコメントをいただいたことがあり、私もそう思います。

『さて、実際に手に取ってみると、なかなか素敵な物です。銀だから価値があるというより、これだけの年月を経て、なおちょっとしたお手入れをするだけで、作られた当時とほとんど同じ状態で使い続けられるという点の価値はすごいと思います。まとめ買いした安いスプーンがいつの間にかどこかにいってしまったり、曲がったりすり減って黒くなり、何回も買い直していることを考えると、世代を超えて使われる銀器は節約の象徴のような気もしてきます。』

写真の品は日本の歴史で言えば、日露戦争の頃に作られております。
当時どんな様子であったかと、夏目漱石の『琴のそら音』を読みました。 時代背景は日露戦争の頃、アンティークな灯りについての記述が多くて、エドワーディアンの英国と重なる感じで、興味深く読みました。 物語ではいきなり最初の一行目から洋燈(ランプ)という言葉が出てきます、いくつか灯りについての記述を抜き出してみました。 

「珍らしいね、久しく来なかったじゃないか」と津田君が出過ぎた洋燈(ランプ)の穂を細めながら尋ねた。(小説の書き出し部分)

「あるいは屋敷の門口に立ててある瓦斯燈ではないかと思ってみていると、」
「三分心の薄暗いランプを片手に奥から駆け出して来た婆さんが頓狂な声を張り上げて」
「天井に丸くランプの影が幽かに写る。見るとその丸い影が動いているようだ。」
「由公はランプのホヤを拭きながら真面目に質問する。」
「幽霊だの亡者だのって、そりゃ御前、昔しの事だあな。電気燈のつく今日そんなべら棒な話しがある訳がねえからな」

今日では電気や電灯が当たり前で、アンティークな昔を想像するのは難しいところがありますが、『琴のそら音』を読みますと、灯りについてノスタルジックな気分も味わえます。
ランプが身近な暮らしというのは、それほど昔のことではないのだなあと、あらためて思いました。 読後感も爽やかな短編小説です。

お客様から、なるほどと思わせていただいたお話がありますので、ご紹介させていただきましょう。 
『先日北海道では珍しい大型台風が通過し、短時間ですが停電となってしまいました。夜、仕方がないので古い灯油ランプを持ち出し屋内の照明としたのですが、以前手配いただいたティースプーンをランプの光にかざしてみたところ、ほの暗い明るさの中、スプーンのボウル内や彫刻の輝きにしばし見とれました。銀のアンティークには点光源の古い照明が合うようです。また昔の貴族が銀器を重用したのもうなずける気がします。』

私はアンティーク ランプ ファンで、早速に試してみたのですが、シルバーにアンティークランプの灯がほんのりと映って揺れているのを見ていると、なんだか心が落ち着くものでした。

エドワーディアン スターリングシルバー ティースプーン



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