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No.14848 グラスゴー コート オブ アームズ(紋章) スターリングシルバー ティースプーン
長さ 11.5cm、重さ 17g、ボール部分の長さ 3.7cm、コート オブ アームズの最大幅 2.3cm、コート オブ アームズの最大厚み 1.5mm、1960年 エジンバラ アセイオフィス、六千円

柄先に見える飾りがスコットランドはグラスゴーの紋章になります。 透かしの入ったこのコート オブ アームズ部分は、銀にかなりの厚みがあって、そのために全体の持ちはかりが17グラムと重たくなっています。 柄の中ほどに見えるねじり構造は、デザイン効果と強度アップを同時に追求するのに役立っており、このねじり柄も3ミリほどの厚みがあります。 そしてボール部分の銀にも厚みが感じられ、全体としてしっかり出来た銀のスプーンに仕上がっております。

ホールマークを調べてみると、お城のマークが刻印されていて、スコットランドのエジンバラ アセイオフィスで検定を受けた品であることが分かります。 英国のホールマーク制度にあっては、ロンドン、シェフィールド、バーミンガムのアセイオフィスの役割が大きくて、三つを合わせたシェアは9割ほどになるでしょう。 逆に言えば、それ以外のアセイオフィス マークが刻印されたシルバーウェアは珍しいので、そこにレア物の価値を見出すコレクターがいるのです。

ボール部分の裏面には四つのホールマークが刻印されています。 ホールマークは順にメーカーズマーク、スターリングシルバーを示すアザミマーク、エジンバラ アセイオフィスのキャッスルマーク、そして1960年のデートレターになります。

つまりこの品は、スコットランド第一の都市エジンバラのアセイオフィスで検定を受けたシルバーウェアで、モチーフとなっているのはスコットランド第二の都市グラスゴーの紋章という、Very Scotishな銀のティースプーンということになります。

ちなみに、このコート オブ アームズの体系化や研究は、イギリスにおいて九百年ほどの歴史を持っており、紋章学(Heraldry)は大学以上の高等教育で学ぶ歴史学の一分野となっています。 中世ヨーロッパにおいては、多くの国々に紋章を管理する国家機関がありました。 今ではなくなっているのが普通ですが、面白いことにイギリスでは紋章院がまだ活動を続けています。

それでは、グラスゴーのコート オブ アームズを詳しく見てみましょう。 写真二番目で中央の楯状部分をご覧になってください。 樹木のてっぺんに鳥がとまっていて、樹の右サイドにベルが下がっていて、樹の下には魚がいるマークが見て取れます。 この「鳥、木、鐘、魚」がグラスゴーの象徴なのです。

キリスト教の聖人St.ムンゴがグラスゴーの街をつくったと言われていて、彼が起こしたと伝わる四つの奇跡をうたった以下の詩にちなんだデザインがグラスゴーのコート オブ アームズになっているわけなのです。

Here's the bird that never flew
Here's the tree that never grew
Here's the bell that never rang
Here's the fish that never swam

というわけで、この盾状飾りの上にいる錫杖を手にした聖人はSt.ムンゴです。

ついでに、エジンバラ アセイオフィスのホールマークについて、この機会に概観しておきましょう。 スコットランドの銀製品がエジンバラで検定を受けるようになったのは遠く1457年にまで遡ります。 そしてエジンバラのアセイオフィスマークである「The Three Towered Castle」が導入されたのは今から 520年前の1485年のことです。 エジンバラに行ってみますと、小高い岩崖の上に街を見下ろすように建つエジンバラ城が、この街の象徴であることがよく分かり、お城がマークとされたのも頷けます。 「Thistle(=アザミ)」マークは、それまでアセイオフィス マスターのイニシャルをもって、銀のスタンダードマークとされていたものに代えて、1759年に導入されたマークで、イングランドで言えばライオンパサントにあたる刻印になります。




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