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トラディショナル イングリッシュ バターナイフ

英国のバターナイフの特徴と歴史を、ヴィクトリア期のバターの製法とあわせてご紹介します。


イングリッシュ バターナイフが最初に現われたのはジョージ三世(在位1760-1820)の頃とされます。

それ以前には、18世紀の中期から後期にかけて、バターナイフの先祖にあたるバタースペードと呼ばれるテーブルウェアが、数は少ないながら約半世紀にわたって使われていました。バタースペードの形は、先細の三角形あるいはハート型の平らなブレードに、銀やアイボリーの柄がついたもので、「バターごて」と言ってもよいかもしれません。しかし、18世紀の後期に新たに登場したバターナイフに、その役割を取って代わられ、以降はほとんど作られなくなりました。

バターナイフも初期の頃はその使用がきわめて稀であったようで、多く使われるようになってきたのは、ヴィクトリアン中期から後期にかけてです。ですからバターナイフはヴィクトリアン中期の創作品と言っても差し支えないかもしれません。

スターリングシルバー バターナイフは大きく2つのタイプに分けられます。
(1) 刃はシルバーで、柄がマザー オブ パール、アイボリー、またはボーンのタイプ。
(2) 刃も柄もすべてシルバーのタイプ。

どちらのタイプとも、初期のバターナイフは、今のバターナイフからは想像できないほどに、がっしりとして重たいものが多く、デザートスプーンぐらいの大きさか、物によってはテーブルスプーンほどの大きさがありました。しかし時を経るにしたがい、だんだんと小ぶりになっていき1880年以降のヴィクトリアン後期になると、小さくて軽いバターナイフ、今日よく見かける形のものとほとんど変わらないものが作られるようになりました。

ヴィクトリアンのバターナイフの形を歴史的にたどっていくと、おもしろい特徴として、「スクープ(へら)からブレード(刃)」の流れがあります。
下の写真1と2はスクープとブレード、2つのタイプの例を示しています。

(写真1:スクープタイプ)


スクープタイプは曲面状の刃を持っています、対してブレードタイプは、今日のバターナイフと同様に平らな刃を持っています。


(写真2:ブレードタイプ)



2つのタイプの違いは、ヴィクトリア時代にアイスボックスが発明され普及したことと関係があります。 アイスボックス以前のバターは、今日のものよりずっとソフトでクリーミーなものでありました。 冷蔵技術が発達する以前には、やわらかいバターを取るのに曲面の方が扱いやすかったのです。

ヴィクトリア中期以前のバター皿 を注意して見てみると、底が深いことに気が付きますが、これも当時のバターの性状を知る手掛かりになります。

ヴィクトリア後期以降もデザイン上の好みから、曲面が採用されるナイフもありましたが、大きな流れとして「スクープ(へら)からブレード(刃)へ」と言ってよいでしょう。

またヴィクトリア時代は、バターは買ってくるものというより、ホームメードするものでありました。 少し大きなお屋敷であれば、デイリーを持っていて、乳製品をホームメードしていました。 また農家はもちろんのこと、都市部を除けば一般の家庭でも、牛を一、二頭飼って小さなデイリーが母屋に併設してあり、自家製バターをつくっているお宅が多かったようです。

先日、ヴィクトリアン後期のバターつくり器を見つけたので、ご紹介しましょう。

(写真3:バターチャーン)


写真3はバターチャーンと呼ばれるもので、蓋と手回しハンドルが壊れてなくなっていますが、樽に詰めたクリームを手回しハンドルで回して、バターを作っていったもの。 
このバターチャーンはヴィクトリア期のデイリーで使用されていたもので、ずいぶん大きな器具ですが、1930年代までには卓上バターチャーンが普及し、イギリスでは1950年ごろまで自家製バターが広く作られていました。



最後に、エドワーディアンのシルバーバターナイフ完成形です。 英国バターナイフの伝統にのっとったオーセンティックなフォルム、綺麗な透かし細工に、美しいハンド エングレービング。

ジョージアンに始まり、エドワーディアン以降、今日に至るまでのバターナイフの全ての歴史を眺め渡しても、頂点に位置するシルバー作品と思えます。

エドワーディアン スターリングシルバー バター ナイフ with ピアストワーク、1910年 バーミンガム アセイオフィス
http://www.igirisumonya.com/20124



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