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No. 5194 木製 スタンホープ クロス with 「GLORIOSUM DOMINI NOSTRI JESU CHRISTI SEPULCRUM」
クロスの縦 5.1cm、横 3.05cm、厚み 6mm弱、中央の丸いレンズの直径 2.5mm、ヴィクトリアン後期からエドワーディアン頃の英国製、二万三千円

レア物のアンティークをご紹介いたしましょう。 写真の品はヴィクトリアン後期からエドワーディアン頃に作られた木製のクロスで、珍しい仕掛けが中央部にあることから、コレクターアイテムとなっています。

向こう側が青空など明るい方に向けて、クロス中央を覗いて見てください。 クロス中央にある丸石のようなレンズを覗き込むと、中にはドーム状の聖堂と廟があって、荘厳な宗教儀式が執り行われている様子が描かれている絵が見えてきます。 実際にはかなり細密な絵なのですが、概要を描いてみましたので写真二番目をご覧になってください。

この仕掛けはスタンホープと呼ばれます。 ヴィクトリア中期にクリスタル素材のスタンホープレンズとマイクロフォト技術が開発されたことによって、ピンの頭ほどのマイクロフォト写真に、宗教画などを撮って、それを拡大して見せる仕掛けが可能になったものです。 スタンホープは1870年頃から1920年頃まで主に作られていました。

その後はスタンホープレンズを作るメーカーがなくなってしまい、この技術も絶えました。 今日では技術を復活させてスタンホープを作っている愛好家のメーカーがアメリカに一社だけあるそうです。

英国におけるスタンホープ研究の第一人者の方とお話させていただく機会があって、いろいろ教えていただいたことがあります。 何でもその道の専門家がいて、ずいぶんマイナーなことでも調べている人がいるというのが、イギリスという国の面白いところです。 また、イギリスにはスタンホープ コレクターズクラブがあって、年に一度はミーティングを開いて、セミナーや情報交換をしているとのことでした。

直径わずか2.5mmのレンズの向こうに、宗教絵画がひらけてくる、なんだか有難いクロスであるわけですが、絵の下にはラテン語になりましょうか、次のような説明が付いています。 
「GLORIOSUM DOMINI NOSTRI JESU CHRISTI SEPULCRUM」

英吉利物屋のお客様にラテン語に詳しい方があって、「我が主 イエス・キリストの荘厳なる墓所」と、日本語訳を教えていただきました。 

私はキリスト教に詳しくないので、初めにスタンホープを覗いた時には分からなかったのですが、しっかり日本語訳をいただいて、ようやくピンときました。 スタンホープ レンズの向こうにある縦横が1ミリに満たないマイクロフォト フィルムに描かれているのは、エルサレムの聖墳墓教会なのでした。

聖墳墓教会はローマ帝国で初めてキリスト教を公認した皇帝コンスタンティヌス一世が4世紀初めに建てた教会です。 キリストが磔刑にされたゴルゴダの丘に教会を建てるよう命じて作られたもので、教会内のドームにイエス・キリストが埋葬され3日後に復活を遂げたとされる石墓があります。 こうした歴史によって、キリスト教にあっては聖地の中の聖地といわれる存在になっています。

以下の旅行記の写真一番目に、スタンホープを覗き込んで見える絵と似た構図の写真があります、私の模写とも比べてみてください、ご参考まで。

エルサレム 聖墳墓教会
http://www.kakura.jp/hw/photos/151/162_2005-10_photos_jerusalem.html





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