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No. 20239 ブライトカット トリニティー モチーフ エドワーディアン スターリングシルバー ケルティック クロス ペンダントヘッド
縦の長さ(留め具含む) 5.0cm、横の長さ 3.4cm、最大厚み 2mm弱、重さ 8g、1902年 バーミンガム アセイオフィス、一万七千円

ブライトカットの彫刻が美しい銀のクロスで、ブリティッシュ ホールマークが刻印されたエドワーディアン シルバーであること、そしてトリニティー&ケルティック モチーフの面白さと、三拍子揃った見所の多いアンティーク シルバーと思います。

ソリッドなスターリングシルバーのクロスで、素材が厚めでしっかり出来ているのは好印象と思います。 クロスの中央が一段高くなった構造で、この辺りが最大厚みの2ミリ弱となっています。 ソリッド(solid)とは、このクロスがホロー(中空)構造ではなくて、中まですべてが銀の稠密構造であることを言います。

写真二番目にあるように、裏面に刻印されたブリティッシュ ホールマークを読み取ってみると、エドワーディアン初期の1902年の作と分かります。 今から120年ほど前の銀で、日露戦争前に日英同盟が結ばれた頃の品になり、かなり古いことがお分かりいただけましょう。 ホールマークは順にバーミンガム アセイオフィスのアンカーマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、1902年のデートレター、そしてメーカーズマークになります。

アーサー王物語の挿絵で見かけるような、このデザインは一般にケルティック クロスと呼ばれます。 丸に十字のデザインを特徴として、太陽とクロスの組み合わせを示しています。 

遠く歴史をたどりますと、このケルティック クロスのモニュメントは英国西部のコーンウォール地方からウェールズ、スコットランド西方諸島、そしてアイルランドに分布していて、千二百年以上前のケルト人によって建てられたものです。 今日的感覚では墓標のように思いますが、そうではなくて、ミーティング ポイントとして建立されたらしく、興味深く思います。

ケルティックとは「ケルト人の」という意味です。 英国史においてケルト系の人達とは、もともとのイギリス先住民で、民族大移動によって欧州大陸方面からノルマン系住民が流入して支配的な地位を占めるようになると、次第に辺境の地へ追いやられていった人たちです。 彼らが追われた辺境とは、スコットランド、ウェールズ、英国西部のコーンウォール、そしてアイルランド等でした。 とは言っても、支配と被支配という関係だけではなく、結局は婚姻などで入り混じって今日のイギリス人が出来あがっています。 ちなみにロンドンという地名やテムズ川の名前はケルトの名称だそうですし、今日の英国人は自分たちのことをブリトンと呼びますが、このブリトンとは元々ケルトの一部族の部族名でした。

イギリスにおけるケルト諸族の歴史については、英国アンティーク情報欄にあります「32. ウェルシュ ボーダーの Weobley村」の解説記事もご覧になってください。

それから、円卓の騎士のアーサー王は、コーンウォールで生まれたとされる伝説的なケルトの王様です。 アーサー王伝説については、「28. Tintagel アーサー王伝説の村」の記事もご参考まで。

また、写真のシルバークロスの場合には、クロスの四方に見える三つの尖がりも特徴的です。 これらはトリニティーを表象しています。 トリニティーとは、「the Father, the Son and the Holy Spirit(父なる神、子なるイエス・キリスト、そして聖霊)」の三者が一体であるとする三位一体説のことで、クロスに見える三つの尖がりが三者をあらわしていると言うわけです。 

オックスフォードやケンブリッジなど歴史の古い大学に行きますと、キングスカレッジやクイーンズカレッジなどの名前に加えて、トリニティーカレッジもおなじみです。 トリニティーという概念は、昔から重要な役割を果たして来たことがうかがい知れます。

もう一つのポイントと言えるのが、クロスの円形部分に見られる深めな彫りで、ブライトカットが施されており、光の反射が綺麗です。

ブライトカットは18世紀の終わり頃から、英国においてその最初の流行が始まりました。 ファセット(彫刻切面)に異なった角度をつけていくことによって、反射光が様々な方向に向かい、キラキラと光って見えることからブライトカットの呼び名があります。 この装飾的なブライトカット技術が初めて登場したのは1770年代でしたが、それは良質の鋼(はがね)が生産可能となってエングレービングツールの性能が向上したことによります。 

『私はキリスト教の信仰者ではありませんが、何故かクロスにとても惹かれます。』というお便りをいただきました。 

英吉利物屋ではアンティークのクロスを扱っておりますので、関心のある方から、そういうお話があるのは珍しいことではないかも知れません。 けれども、クロスに惹かれるという話はこれが初めてというわけでなく、多くの方からお聞きしてきましたし、私もそう感じることがあるので、なぜだろうかと考えたくなるのです。

英国アンティーク情報欄にあります「40. 何故かクロスにとても惹かれます。 その理由を英吉利物屋風に考えてみました。」もご覧いただければ幸いです。

ブライトカット トリニティー モチーフ エドワーディアン スターリングシルバー ケルティック クロス ペンダントヘッド

ブライトカット トリニティー モチーフ エドワーディアン スターリングシルバー ケルティック クロス ペンダントヘッド

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