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No.18339 セント・ジョージ&ドラゴン、ヴィクトリア女王 ピンチバック ジェトン ペンダントヘッド
直径 2.2cm、留め具の銀円環を含む縦長 2.5cm、重さ 5g、厚み 1mm、ヴィクトリアン終り頃 Lauer 作、八千五百円

写真の品はなかなかに興味深いヴィクトリアン アンティークと思います。 白熱電灯のもとで写真を撮りましたので、赤みがかって見えますが、実際にはゴールドの色合いをしています。

写真一番目はセント・ジョージ&ドラゴンで、下方には『1830』とあります。 写真二番目はヴィクトリア女王の横顔で、下方にはメーカーズマークの『Lauer』が見えます。

ヴィクトリア女王の顔立ちには品のよさを感じさせ、作り手のレベルが高いことを示しています。 また、反対サイドに見えるセント・ジョージ&ドラゴンは、いかにも英国風なモチーフと言えましょう。

このペンダントヘッドは、1880年代から1890年代あたりに作られた『Lauer』製のジェトンと考えられます。 ジェトンというのは、ヴィクトリア時代の玩具用コインです。 カードゲーム等に使われた点数カウントのコインでありますが、かなり精巧な出来栄えで、うっかりすると本物と間違うほどなので、『1830』とあるのでしょう。 ヴィクトリア時代は1837年から始まるので、本物の金貨であれば1830年鋳造はありえないわけです。 

この品と同じメーカーによるアンティーク ジェトンを、ケンブリッジ大学付属のフィッツウィリアム博物館で見つけました。 『18339 セント・ジョージ&ドラゴン、ヴィクトリア女王 ピンチバック ジェトン ペンダントヘッド』はフィッツウィリアム博物館の所蔵品と同等、いわゆるミュージアム ピースの一つにあたるアンティークとも考えられるわけです。 

フィッツウィリアム博物館のサイトでさまざまなジェトンを見比べてみると、『Lauer』の作は精巧でレベルが高いことが分かります。 ヴィクトリア時代に作られたジェトンの中でも、『Lauer』の技術はロイヤルミント(英国王立造幣局)に匹敵する水準にあったことが分かり、興味深く思います。
http://www.fitzmuseum.cam.ac.uk/

素材はピンチバックと呼ばれるアンティークな素材です。 この素材は銅と亜鉛の合金で、ゴールドの色あいをもたらすジュエリー素材として、ヴィクトリアンの英国で好まれてしばしば使われました。 元々は1720年ごろにロンドンの時計メーカーであったクリストファー ピンチバックという人が発明したことから、ピンチバックの名で呼ばれるようになったのでした。

馬に乗ったセント・ジョージにドラゴンが踏みつけられているのは、ちょっとかわいそうですが、このドラゴンは王様の娘を生贄として食べようとした悪いドラゴンなので、仕方がありません。

セント・ジョージは古代ローマ時代の殉教者で、そのドラゴン退治伝説は元々はグルジアに起源があり、キリスト教徒にとっては共通のバックグラウンドになります。 歴史を紐解けば、遠く遡ること五世紀のフランク王国メロビング朝をはじめとして、いろいろな国々で守護聖人として大事にされてきました。

ちなみにグルジアは旧ソビエト連邦構成国の一つで、黒海とカスピ海の間に位置しています。 日本語ではグルジアと表記されますが、英語で言ったらジョージアになり、つまりはセント・ジョージの国という由来です。 ずいぶん以前にアゼルバイジャンのバクーからグルジアの首都トビリシまで、夜汽車に乗って行ったことがあります。 コーカサスの山々を遠くに望む景色が、日本の山並みにも似た感じだったことを覚えております。 

以上のようにセント・ジョージと言えば、その本家筋はグルジア共和国であります。 ところがヴィクトリア時代のイギリスはセント・ジョージを好んで、金貨や銀貨のデザインとして採用したり、白地に赤十字のセント・ジョージ・クロスをイングランドの国旗として採用したりしてきたので、今では他の国々より一歩抜きん出て、自由の女神がアメリカを象徴するかのように、セント・ジョージ=イングランドのような感じになって現代に至っております。

サッカーのワールドカップで、セント・ジョージ・クロス旗で応援されるイングランドチームを見せつけられると、やはり他の国は一歩も二歩も譲らざるを得ない、そんな雰囲気でしょうか。

以下の説明記事にもヴィクトリア女王の肖像画があります、ご参考まで。 14. Still Victorian (百年ほど前のイギリスはどんな様子であったのか?)





セント・ジョージ&ドラゴン、ヴィクトリア女王 ピンチバック ジェトン ペンダントヘッド

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