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アイスクリーム より美味しくする 銀のスプーン (1)






銀のスプーンが、アイスクリームを美味しくするわけ

アイスクリームを食べるとき、味覚のみならず、銀に伝わる涼を触覚で、露点に達する冷たさを視覚で、五感を多く使えば、それだけ美味しさが増す。
銀の熱伝導率の高さが大きく関与しています。
銀のスプーンが、アイスクリームを美味しくするわけ(英国 アンティーク シルバー 英吉利物屋)銀のスプーンが、アイスクリームを美味しくするわけ(英国 アンティーク シルバー 英吉利物屋)


No. 20091 エドワーディアン アール・ヌーボー スターリングシルバー ティースプーン
長さ 11.2cm、重さ 13g、ボール部分の長さ 3.6cm、最大幅 2.35cm、ボールの深さ 6mm、柄の最大幅 1.35cm、1911年 シェフィールド、James Deakin & Sons作

今から百年以上前の1911年に作られた、アール・ヌーボーのデザインが特徴的なスターリングシルバー スプーンです。 これまで長いこと英国の銀スプーンを扱ってきましたが、写真のようなデザインは見かけたことがなく、第一印象はイギリスの銀スプーンではない感じがいたしました。 

ところが、ブリティッシュ シルバー ホールマークがしっかり刻印されており、シルバースミスは有名どころのJames Deakin & Sonsと分かり、さらには、英国のパテントオフィスにデザインを登録したレジスター番号『Rd.589543』まで揃っていることから、これはもう正真正銘の英国アンティーク シルバー以外の何者でもありません。

James Deakin & Sonsが手がけたアール・ヌーボーということで、興味深く見ております。 それにしても、あまり見かけないレアな品であることから、James Deakin & Sonsによる少量生産だったのだろうと思います。

写真二番目に見えるように、裏面にはブリティッシュ ホールマークが刻印されています。 ホールマークは順にシェフィールド アセイオフィスの王冠マーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、1911年のデートレター、そしてJames Deakin & Sonsのメーカーズマークです。

シルバースミスのJames Deakin & Sons Ltdは、1865年にジェームス・ディーキンによってシェフィールドで創業されたのが始まりです。1886年には彼の三人の息子達、ウィリアム、ジョン、アルバートもパートナーに加わり、ファミリービジネスとして上述の社名に変更し、その後は順調に発展していきました。1888年にはロンドン支店開設、ヴィクトリア後期の1890年代には、スコットランドのグラスゴーとアイルランドのベルファストにも支店を開設しています。 

しかし多くのシルバースミスがそうであったように、この銀工房の最盛期は英国の国力がピークであったビクトリア後期からエドワーディアンの時代にあったようです。その後は事業を次第に縮小していき第二次世界大戦が始まった1940年には店を閉めました。メーカーズマークの「JD WD」はJohn & William Deakinのイニシャルになっています。 

エドワーディアン アール・ヌーボー スターリングシルバー ティースプーン


No. 20232 マッピン & ウェブ スターリングシルバー ティースプーン 一部 SOLD
長さ 10.8cm、重さ 10g、ボール部分の長さ 3.7cm、最大幅 2.05cm、ボールの深さ 6mm、柄の最大幅 1.0cm、柄の厚み 2mm、1921年 ロンドン、Mappin & Webb作、 (6本あります-->4本あります。)

今から百年ほど前に作られたMappin & Webbのスターリングシルバー ティースプーンです。 ボール部分が深くて細身なタイプで、品のよさが感じられます。 柄のデザインはシンプルながらも、銀の厚みが感じられて好印象な品と思います。 

ボール裏面のホールマークは順に、Mappin & Webbのメーカーズマーク、1921年のデートレター、ロンドン レオパードヘッド、そしてスターリングシルバーを示すライオンパサントです。 

英国で「アンティーク」という言葉を厳密な意味で使うと、「百年以上の時を経た品」を指すことになります。 そんな訳で、英語で言うと「It will become an antique in four years. (この品はあと四年でアンティークになります。)」という言い方をされることがあります。 アンティークコレクターにとっては、やはり百年という年月の経過は大きなメルクマールになりますので、上記のような会話がなされる機会も多いのです。 

この銀製品が作られたのは1921年ですから、正式なアンティークへの昇格がすぐそばに来ています。 気に入った古いものを使っていくうちに、その品が自分の手元で‘アンティーク’になっていくことは、コレクターの喜びとも言えますので、この品には、そんな楽しみ方もあるかと思うのです。

メーカーは言わずと知れた有名工房ですが、このシルバースミスの歴史をご紹介しましょう。

マッピン関連のアンティークを扱っていると、「Mappin & Webb」とよく似た名前の「Mappin Brothers」というシルバースミスに出会うことがあります。
「Mappin Brothers」は1810年にジョセフ マッピンが創業した工房で、彼には四人の後継ぎ息子がありました。四人は上から順にフレデリック、エドワード、チャールズ、そしてジョンで、年長の者から順番に父親の見習いを勤めて成長し、1850年頃には引退した父ジョセフに代わって、四兄弟が工房を支えていました。

ところが末っ子のジョンは、工房の運営をめぐって次第に兄たちと意見が合わなくなり、ついに1859年には「Mappin Brothers」を辞めて独立し、「Mappin & Co」という銀工房を立ち上げました。 以後しばらくの間、「Mappin Brothers」と「Mappin & Co」は「元祖マッピン家」を主張しあって争うことになります。

しかし最初のうちは「Mappin Brothers」の方が勢力があったこともあり、1863年には末っ子ジョンの「Mappin & Co」は「Mappin & Webb」に改名することとなりました。 Webbというのはジョンのパートナーであったジョージ・ウェブの名から来ています。

「元祖マッピン家」問題では遅れをとったジョンでしたが、兄たちよりも商売センスがあったようです。 スターリングシルバー製品以外に、シルバープレートの普及品にも力を入れ、目新しい趣向を凝らした品や新鮮なデザインの品を次々と打ち出し、しかも宣伝上手だったのです。 ヴィクトリアン後期には当時の新興階級の間でもっとも受け入れられるメーカーに成長し、それ以降のさらなる飛躍に向けて磐石な基盤が整いました。

20世紀に入ってからの「Mappin & Webb」は、「Walker & Hall」や「Goldsmiths & Silversmiths Co」といったライバルの有名メーカーを次々にその傘下に収めて大きくなり、今日に至っています。 

また、「Mappin Brothers」ですが、時代の波に乗り切れなかったのか、1902年には「Mappin & Webb」に吸収されてしまっています。 ただ、その頃には三人にお兄さん達はとっくの昔に引退しており、後を継いだエドワードの息子さんも引退して、マッピン家のゆかりはいなかったようです。 そうこう考えると、ジョージアンの創業で、ヴィクトリア時代に二つに分かれたマッピンが、エドワーディアンに入ってまた一つの鞘に戻れたことはよかったのかなとも思うのです。

マッピン & ウェブ スターリングシルバー ティースプーン


No. 20092 スターリングシルバー ピアストワーク ティースプーン
長さ 11.4cm、最大横幅 2.35cm、透かし柄の最大幅 1.5cm、柄の最大厚み 2mm、重さ 11g、1976年 1979年 1980年、シェフィールド、(3本あります)

透かし細工の綺麗なスターリングシルバーのティースプーンです。 裏面にはブリティッシュ ホールマークがしっかりなのもグッドでしょう。 

ゴルフ関連の銀製品と考えられ、ある意味とても英国風なシルバーウェアと言えると思います。 イギリスではいろいろなスポーツが盛んですが、こういった銀製品との関連の深さでは、ゴルフとライフルクラブが両横綱といった感があります。 

今日ではイギリスのゴルフ愛好家の裾野が広がってきているようでありますが、少し前まではお金持ちのスポーツであったことと関連がありそうに見ております。

写真二番目に見えるように、柄の裏面には「R & D」のメーカーズマーク、デートレター、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そしてシェフィールド アセイオフィスのローズマークが刻印されています。

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ライフルやゴルフクラブ関連で、多く見かけるアンティーク シルバー

スターリングシルバー ピアストワーク ティースプーンスターリングシルバー ピアストワーク ティースプーン


No. 20093 スターリングシルバー ピアストワーク ティースプーン
長さ 11.6cm、最大横幅 2.5cm、透かし柄の最大幅 1.35cm、重さ 11g、1971年、バーミンガム、(1本あります)

20092 透かし銀スプーンと似ていますが、銀工房とアセイオフィスが異なります。 透かし細工もよく見ると、微妙な違いがあります。

透かし細工の綺麗なスターリングシルバーのティースプーンです。 裏面にはブリティッシュ ホールマークがしっかりなのもグッドでしょう。 

ゴルフ関連の銀製品と考えられ、ある意味とても英国風なシルバーウェアと言えると思います。 イギリスではいろいろなスポーツが盛んですが、こういった銀製品との関連の深さでは、ゴルフとライフルクラブが両横綱といった感があります。 

今日ではイギリスのゴルフ愛好家の裾野が広がってきているようでありますが、少し前まではお金持ちのスポーツであったことと関連がありそうに見ております。

写真二番目に見えるように、柄の裏面には「DB」のメーカーズマーク、デートレター、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そしてシェフィールド アセイオフィスのローズマークが刻印されています。

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スターリングシルバー ピアストワーク ティースプーン


No.20228 ジョージ三世 スターリングシルバー オールドイングリッシュ パターン ティースプーン
長さ 13.4cm、重さ 17g、ボール部分の長さ 4.6cm、最大横幅 2.7cm、ボールの深さ 0.6cm、柄の最大幅 1.25cm、1800年 ロンドン

今から二百二十年も前に作られたスターリングシルバーのティースプーンです。 二世紀を越えた古さは、たいへんな魅力になろうかと思います。 柄の裏面にはブリティッシュ ホールマークがどれもしっかり深く刻印されているのもポイントです。 

柄の裏面に刻印されたホールマークは順に、メーカーズマーク、ジョージ三世の横顔でデューティーマーク、1800年のデートレター、そしてスターリングシルバーを示すライオンパサントとなっています。

英国でアンティークという言葉を厳密な意味で使うと、百年以上の時を経た品物を指します。 気に入った古いものを使っていくうちに、その品が自分の手元で‘アンティーク’になっていくことは、コレクターの喜びとも言えますが、このティースプーンが作られたのは1800年ですから、余裕でアンティークのカテゴリーに入るどころか、さらには既に"ダブル"アンティークともなっており、そんな辺りもアンティーク シルバーファンとして、嬉しい銀であると感じます。

かなり古いスプーンをお求めいただいたお客様から、ジョージアンの時代に銀器を使っていた人たちはどんな人たちだったのかというご質問をいただきました。 遠い昔に銀器を使っていたのは豊かな人たちであったに違いありませんが、この問題はよく考えてみると、もっと奥の深い問題であることが分かります。

ジョージアンの時代に銀器を使っていた人たちは、百年ほど前のヴィクトリアン後期に銀器を持っていた人たちよりも、一段と社会階層が上のお金持ちだったと思われます。 ジョージアンの時代には、まだまだ銀は社会の上層階級の占有物であったからです。 ヴィクトリア期には英国の経済力も大いに伸長したので、ヴィクトリアン後期の英国では銀器が新興富裕層にまで普及し、その裾野が広がりました。 つまり銀器を使った昔のお金持ちといっても、ジョージアンの時代とヴィクトリアンの時代ではその意味合いや程度が大きく異なるのです。

「International Hallmarks on Silver」という本に、過去の銀世界生産量推計という面白い資料がありました。 その資料によれば、写真の銀スプーンが作られた頃の年間銀生産量は460トンほどで、ヴィクトリア時代最後の1900年は5400トンとあります。 時代と共に生産量が十倍以上に増しているわけですが、逆にみると、より昔の時代における銀の希少性について、お分かりいただけるのではないでしょうか。

ジョージアンとヴィクトリアンでは銀のスプーン一本を取ってみても、そのステータスシンボルとしての価値はかなり違っていたわけです。 もっと詳しく知るためには、英国社会史や経済史の理解が不可欠になりましょう。 これからも少しずつ調べて、個々のアンティークが持つ時代背景について、英吉利物屋サイトでお伝えしていければと思っています。

銀の価値を考えているうちに、もしこの銀スプーンを江戸時代にタイムスリップさせたら、いったいどのくらいの価値があったものだろうかと思考実験をしてみました。 当時の英仏独伊といった国々のスタンダードは金銀複本位制で、銀の地金はマネーと等価であり、各国通貨への換算額も容易に計算できます。 ところが、江戸時代の日本では違った貨幣制度が採用されておりましたので、ややこしいところがあります。 

例えば時代劇など見ておりますと、両替商というのが出てきて、しばしば御奉行様と結託しては悪事を働いたりしております。 両替商の仕事といっても、鎖国の江戸時代に、海外旅行用の外貨両替なんてことはありえません。 それでは、この両替商はいったい何を両替していたのでしょうか。 江戸時代の日本では、金貨である小判と、銀貨、そして寛永通宝といった銭、これら三種マネーの交換レートが市場にまかされており、変動相場制になっていました。 極論すれば、ドルとユーロとポンドというレート変動する三通貨が一国の中で流通していたようなもので、そこに両替商の存在意義があったのです。

そんなわけで、写真の銀スプーンは一種の銀地金でありますが、江戸時代のマネーに換算するには、小判か銀貨か銭か、難しさが伴うのです。

ここでは、なるべく簡単な試算ということで、天保一分銀への銀地金換算をしてみましょう。 イギリスでヴィクトリア時代が始まった1837年は、日本では天保8年にあたり、この年から天保一分銀の鋳造が始まっています。 天保一分銀は江戸時代の中でも、特にエポックメイキングな銀貨であって、それがまたヴィクトリアンと重なっていることから、この銀貨について少し詳しくなるのもよいでしょう。

天保一分銀の重さは8.62グラム、銀純度は99%ほぼ純銀でした。 写真のスプーンは重さが17グラムのスターリングシルバーですから、銀の重さは17g*92.5%=15.7gとなります。 そうしますと、銀地金換算で、この銀スプーンは天保一分銀 二枚弱の価値があることになります。 

これを小判で換算すると、一分銀四枚で小判一枚と等価でしたので、このスプーン二本半ほどで小判一枚の価値となり、当時の国際標準からすると相当な高額物品になってしまうのです。 その理由は徳川幕府の貨幣制度にありました。 幕府は長い年月をかけて銀高金安誘導に成功し、天保一分銀の鋳造をもって、素材に銀を含むことから銀貨ではあることは間違いないけれども、その実態は銀高金安を固定する計数貨幣を完成させたのでした。 

江戸時代の人々は小判と銀貨を使ってはおりましたが、その貨幣制度は「自由な貨幣鋳造」が認められていなかったという点で、金銀複本位制というよりも、むしろ現代の管理通貨制度に近い仕組みでありました。 なお、「自由な貨幣鋳造」とは、人々が造幣局に持ち込んだ金銀の地金を、造幣局が金属的に等価な金貨あるいは銀貨と交換してくれることを意味します。 

ジョージ三世 スターリングシルバー オールドイングリッシュ パターン ティースプーン


No.20051 アスプレイ アール・デコ スターリングシルバー ティースプーン 一部 SOLD
長さ 11.0cm、重さ 11g、ボール部分の長さ 3.6cm、最大横幅 2.4cm、深さ 6mm、柄の最大幅 1.15cm、1971年 バーミンガム、Asprey & Co. Ltd 作、(12本あります-->6本あります。)

直線的なアール・デコ 幾何学デザインのスターリングシルバー ティースプーンです。 シルバースミス(=銀工房)は Asprey & Co. Ltd になります。 

このアスプレイというお店は1781年創業、英国王室御用達で、現在でもイギリスにおける宝飾店の最高峰と言われ、ロンドンのボンドストリートに立派なお店を構えています。 イギリス銀製品を専門に扱うガイドブック 『Jackson's Hallmarks』 では、アスプレイについて「Justifiably famous for the quality of its products (もっともで当たり前のことながら、その品質の良さは有名である。)」と最上級のコメントです。

Asprey & Co. Ltd
http://www.asprey.com/collection/silver/tableware/eggcups/chicken-leg-egg-cup-spoon

アスプレイの作となる同じデザインのテーブルスプーンを以前に扱ったことがあります。 そのテーブルスプーンは1936年の作でしたので、写真のティースプーンのデザインは1930年代 アール・デコの時代から少なくとも1971年までの長きにわたって、アスプレイの定番として取り扱われてきたことが分かります。 

イギリスでも超のつくような老舗においては、頻繁にモデルチェンジしないと言うか、よいものであれば、あくまでも昔のものにこだわっていく姿勢が伺えて、興味深いところです。 ただ一方で思いますのは、こういう古いものへのこだわりは、老舗に限らず、広くイギリス人一般に見られる特性の一つかも知れません。 

昨今の例で言えば、イギリスがなんだかんだ言って、欧州共通通貨ユーロに参加せず、あくまでもスターリングポンドにこだわり続ける姿勢も、根っこのところでつながりがあるように見ています。

写真二番目に見える裏面のホールマークは順に「Asprey & Co.Ltd」のメーカーズマーク、バーミンガム アセイオフィスのアンカーマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1971年のデートレターで、どの刻印もはっきりしています。 

林望氏の『イギリス観察辞典』という本に「アスプレイ」の項目があり、面白く分かりやすい解説がありますので、詳細は本をご覧いただくとして、抜粋をご紹介しましょう。

『世の中にまた、アスプレイという会社ほどイギリス的なものもあるまいと思われる。この会社はまったく不思議な組織で、アスプレイ家が経営している王室御用達の店なのだが、いったい何を商っているのかというと、なんでしょうねぇ...おおまかに言えば雑貨屋さんなのだ。しかし、そんじょそこらの雑貨商とは全然違う。 

いかなる注文にも応じて、この会社の職人に作れぬものはない、...

「たとえば...」とアスプレイのスタッフは言った。「当社では、お客様にロンドンへお越し頂くのではなくて、ロンドンから職人を派遣して、お客様のご注文を承る、ということになってございます。」  そのようにしてカスタムメイドされた流麗な散弾銃が二挺一組で六万五千ポンドだそうである。 ざっと千三百万円! どうです、安いものでしょう。

むろんこの会社は「物」を作って売る会社ではあるけれど、その本当の趣旨はもう少し深いところにあって、たぶんそういうイギリス人魂とか、イギリスの夢とでもいうようなものを、「何かの形」に作って売ることを目的としているのであろう。』 以上抜粋。

それから、このアスプレイにはアンティークシルバーのコーナーもあります。 ロンドンのボンドストリートやニューボンドストリート沿いの老舗アンティーク店の中でも、とりわけアスプレイは高級店で、気軽さはありませんが、英国にお越しの際にはロンドンアンティークショップの最高峰を見てみるのも面白いかも知れません。

1920年代、30年代はアール・デコの時代ですが、ヴィクトリアンあるいはエドワーディアンの伝統的で凝ったシルバーデザインとは大きく異なる変更が、この時代にあったことは、とても興味深いと思います。 ある解説によれば、このデザイン上の大きな断絶を生み出した最大の要因は第一次大戦だったと言われています。 当時の人たちはヴィクトリアンとエドワーディアンの輝かしい伝統の延長上に世界大戦が起こったことに大きなショックを覚え、ポストワーの時代には、昔の時代から距離を置きたいと望む風潮が強く、そこにアール・デコがぴたりとはまったというわけです。 

アール・デコについてはいろいろな説明がありますが、この解説はかなり言いえているように思います。 イギリスを隅々まで旅してみて、どんな小さな田舎の村にも、第一次大戦の戦没者を悼む記念碑が建っているのを知りました。 英国人の暮らしを根底から揺るがした出来事であったことが想像されるのです。

アスプレイ アール・デコ スターリングシルバー ティースプーン


No. 20200 スターリングシルバー ハノーベリアン パターン ティースプーン with ラットテール SOLD
長さ 11.9cm、重さ 16g、最大幅 2.4cm、柄の最大幅 1.15cm、柄の最大厚み 2mm強、1914年 シェフィールド、五千円(3本あります-->SOLD)

今から百年以上前に作られたスターリングシルバー スプーンで、細身なタイプで品のいい銀製品と感じます。 柄先が少し手前に曲がったタイプで、ハノーベリアンパターンと呼ばれます。 写真二番目でボール裏面を見ていただくと、先が細くなったネズミの尻尾のようなデザインになっており、これがラットテールと呼ばれる構造です。 ラットテールはハノーベリアン パターンに付随して現れることが多いデザインです。

ラットテールはハノーベリアン パターンと、それより以前のドッグノーズやトレフィッド パターンで見られる構造ですが、元々は柄とボールの接合部分を補強するために採用された手法でした。 スプーンの歴史を考えてみると、棒状の柄の先にボールを取り付けたスプーンという道具は、技術レベルが低かった初期段階においては、柄とボールの接合部から壊れることが多かったのです。 

そこで考えられたのが、ラットテールという梁を付けて補強する方法でした。 そのうちに、素材の質や工作技術のレベルが向上してくると、ラットテールは実用上の必要性が薄くなってきましたが、今度は装飾的な観点から、ラットテールが採用されることも出てきました。 

さらに後の時代になると、まさにこの写真のティースプーンがそれにあたるわけですが、昔風なラットテールはノスタルジーを感じさせてくれることから、時に選好されたものと考えられます。

なお、イギリスにおけるスプーンパターンの歴史については、英国アンティーク情報欄にあります「4. イングリッシュ スプーン パターン」の解説記事もご参考ください。

柄の裏面にはブリティッシュ ホールマークが、どれもしっかり深く刻印されているのもよいでしょう。 ホールマークは順にメーカーズマーク、シェフィールド アセイオフィスの王冠、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1914年のデートレターになります。

スターリングシルバー ハノーベリアン パターン ティースプーン with ラットテール(英国 アンティーク シルバー 英吉利物屋)


No. 20187 スターリングシルバー ティースプーン一部 SOLD
長さ 10.7cm、重さ 11g、ボール部分の長さ 3.8cm、最大幅 2.1cm、ボールの深さ 7mm、柄の最大幅 1.1cm、1930年 ロンドン(6本あります-->4本あります-->2本あります。)

柄先に向かって、波のフォルムがエレガントな印象です。

いろいろ銀スプーンを見てきましたが、ボール部分の深さが特徴となっており、ちょっと珍しいなと思って見ております。

ボール部分の全体として細身なフォルムが、この銀スプーンの優雅さが増しているように思います。

ボール部分の裏面には四つのブリティッシュ ホールマークが刻印されています。

写真二番目の見えるホールマークは順に、メーカーズマーク、1930年のデートレター、ロンドン アセイオフィスのレオパードヘッド、そしてスターリングシルバーを示すライオンパサントになります。

英国でアンティークという言葉を厳密な意味で使うと、百年以上の時を経た品物を指します、そして百年もので素晴らしいアンティークはそうはないものです。 写真の品は正式な‘アンティーク’の仲間入りを果たすまで、あと十年ほど、節目の百年が見えてきております。 

気に入った古いものを身近で使っていくうちに、一世紀という節目の年月を迎えられることはコレクターの喜びとも言え、このシルバー アンティークにはそんな楽しみ方もあると思うのです。
スターリングシルバー ティースプーン(英国 アンティーク シルバー 英吉利物屋)


No. 20086 エドワーディアン スターリングシルバー 植物文様 ウェーブパターン & ブライトカット ティースプーン SOLD
長さ 11.0cm、重さ 13g、ボール部分の長さ 3.5cm、最大幅 2.3cm、ボールの深さ 6.5mm、柄の最大幅 1.1cm、1913年 シェフィールド、五千円(2本あります-->SOLD)

百年以上前に作られた銀のスプーンで、手彫りの装飾が見事な品と思います。

植物文様 ウェーブパターンの基本デザインは、深めなタッチで彫られています。 その背景に色合いが濃く見える部分は微細な彫刻で影を付けた細工です。 波模様モチーフには、Continuation(続いていくこと)や Eternity(永遠)という意味合いが象徴されており、ヴィクトリアンからエドワーディアンの頃に好まれたクリスチャンモチーフのデザインです。

柄元に向かってのブライトカットは光の反射が綺麗です。 ブライトカットは18世紀の終わり頃から、英国においてその最初の流行が始まりました。 ファセット(彫刻切面)に異なった角度をつけていくことによって、反射光が様々な方向に向かい、キラキラと光って見えることからブライトカットの呼び名があります。 この装飾的なブライトカット技術が初めて登場したのは1770年代でしたが、それは良質の鋼(はがね)が生産可能となってエングレービングツールの性能が向上したことによります。

英国でアンティークという言葉を厳密な意味で使うと、百年以上の時を経た品物を指します、そして百年もので素晴らしいアンティークはそうはないものです。 この品はもうすでに ‘アンティーク’になっている古さで、時の流れを感じさせてくれますし、ほぼ未使用と思われるコンディションの良さもポイントになっています。

エドワーディアン スターリングシルバー 植物文様 ウェーブパターン & ブライトカット ティースプーンエドワーディアン スターリングシルバー 植物文様 ウェーブパターン & ブライトカット ティースプーン





No.20139 エリザベス二世 シルバージュビリー 戴冠25周年 スターリングシルバー ジャムスプーン
長さ 12.8cm、重さ 16g、ボール部分の最大幅 3.15cm、柄の最大幅 1.1cm、1977年 バーミンガム アセイオフィス、一万二千円

クィーン エリザベス二世の戴冠25周年 シルバージュビリーの年に作られたスターリングシルバー スプーンです。 柄元に近いボールサイド部分のダブルノッチ構造など、イングリッシュ ジャムスプーンの特徴をよく備えています。 また、ボール部分が先細な作りになっていて、品のよさを感じさせます。 柄の厚みは2ミリほどあって、厚めに出来ていると思います。

写真二番目で見えるように、柄の裏面にブリティッシュ ホールマークがどれもしっかり深く刻印されているのもよいでしょう。 ホールマークは順にメーカーズマーク、バーミンガム アセイオフィスのアンカーマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、1977年のデートレター、そしてエリザベス二世の横顔マークでシルバー ジュビリーマークになります。

1977年は女王戴冠25周年に当たり、それを記念してこの年に作られた銀製品には、通常ホールマークのデートレターに加えてオプショナルに、このSilver Jubileeマークが刻印されているわけなのです。

もともとジャムスプーンですから、もちろん、今でもジャムスプーンとしてお使いいただけます。 1977年の作ということで、ヴィクトリアンやエドワーディアンのジャムスプーンより小振りでありますことから、アイスクリーム スプーンとしても、ちょうどいいサイズです。 ボール部分が比較的フラットで、ボール先の形状も、アイスクリームにスッと入っていく感じがあって、よろしいです。

英吉利物屋の扱い品としては比較的に近年の作になりますが、それでも四十年以上の年月が経過しております。 これまでも大切に扱われてきたようですが、こうして半世紀が経ち、一世紀が経っていくのだろうなと見ております。

彫刻のないプレーンタイプになりますが、品のよいフォルムは十分に美しく、磨きぬかれたソリッドシルバーの輝きを楽しむのも、またよいのではと思わせてくれるシルバースプーンと感じます。

お客様から、なるほどと思わせていただいたお話がありますので、ご紹介させていただきましょう。 
『先日北海道では珍しい大型台風が通過し、短時間ですが停電となってしまいました。夜、仕方がないので古い灯油ランプを持ち出し屋内の照明としたのですが、以前手配いただいたティースプーンをランプの光にかざしてみたところ、ほの暗い明るさの中、スプーンのボウル内や彫刻の輝きにしばし見とれました。銀のアンティークには点光源の古い照明が合うようです。また昔の貴族が銀器を重用したのもうなずける気がします。』

私はアンティーク ランプ ファンで、早速に試してみたのですが、シルバーにアンティークランプの灯がほんのりと映って揺れているのを見ていると、なんだか心が落ち着くものでした。

エリザベス女王が戴冠されて間もない頃、こんなことがありました。

1952年12月5日、ロンドンでは折りからの寒さの中、風が止み濃い霧がたち込み始めました。 この霧はそれから3日間ロンドンを覆うことになります。 寒さで人々が石炭ストーブをどんどん焚くものですから、霧の原因となる微粒子核が撒き散らされて、霧がどんどん深くなっていったのです。 ものすごい霧で、2~3メートル先はおろか、伸ばした自分の指先さえはっきり見えなかったと伝えられています。 映画館や劇場でもドアの隙間から霧が入り込んで、スクリーンや舞台が見えず、キャンセルが相次ぎました。 そして濃霧による交通事故や不清浄スモッグによる呼吸器障害のために、ロンドンで四千人もの死者が出る大惨事となったのです。 

昔からロンドンと言えば、霧の街として有名でしたが、「Great Smog」は長いロンドンの歴史の中でも最悪の出来事となりました。 そしてこれを契機に数年後の1956年には清浄空気法が定められることとなったのです。 

石炭ストーブ時代の「Great Smog」のエピソードは今日では考えられない出来事ですが、現エリザベス女王が戴冠された頃に思いをいたす面白い手掛かりにはなるでしょう。
エリザベス二世 シルバージュビリー 戴冠25周年 スターリングシルバー ジャムスプーン(英国 アンティーク シルバー 英吉利物屋)エリザベス二世 シルバージュビリー 戴冠25周年 スターリングシルバー ジャムスプーン(英国 アンティーク シルバー 英吉利物屋)




No. 20033 ハノーベリアン パターン with ラットテール スターリングシルバー ティースプーン 一部 SOLD
長さ 9.3cm、重さ 10g、最大幅 2.1cm、柄の最大幅 0.85cm、柄の最大厚み 2mm強、1962年 バーミンガム、Turner & Simpson作、一本 三千五百円 (6本あります-->4本あります-->1本あります。)

今から半世紀以上前に作られたスターリングシルバー スプーンです。 小振りな銀でありますが、細身のフォルムから品のよさが感じられる銀製品です。 

写真一番目に見えるように、ハンドル部分の中央部は山の稜線のように、まわりから盛り上がった作りになっています。 この銀の稜線構造によって、しろがねに映る光の反射に変化がもたらされ、シンプルな銀スプーンでありながら、ほどよいアクセントとなっています。 また、手にした時の銀の厚みにもつながる作りであって、好印象な銀製品と思いました。

よく見ていくと、ブリティッシュ シルバーウェアの長い伝統に裏打ちされた銀であると分かってきて、そんなところにも、興味を惹かれる英国ティースプーンであります。

柄先が少し手前に曲がったタイプで、これがハノーベリアンパターンと呼ばれます。 写真二番目でボール裏面を見ていただくと、先が細くなったネズミの尻尾のようなデザインになっており、これはラットテールと呼ばれる構造です。 ラットテールはハノーベリアン パターンに付随して現れることが多いデザインです。

ラットテールはハノーベリアン パターンと、それより以前のドッグノーズやトレフィッド パターンで見られる構造ですが、元々は柄とボールの接合部分を補強するために採用された手法でした。 スプーンの歴史を考えてみると、棒状の柄の先にボールを取り付けたスプーンという道具は、技術レベルが低かった初期段階においては、柄とボールの接合部から壊れることが多かったのです。 

そこで考えられたのが、ラットテールという梁を付けて補強する方法でした。 そのうちに、素材の質や工作技術のレベルが向上してくると、ラットテールは実用上の必要性が薄くなってきましたが、今度は装飾的な観点から、ラットテールが採用されることも出てきました。 

さらに後の時代になると、まさにこの写真のティースプーンがそれにあたるわけですが、昔風なラットテールはノスタルジーを感じさせてくれることから、時代が移り変わっていっても、時々に選好されたものと考えられます。

なお、イギリスにおけるスプーンパターンの歴史については、英国アンティーク情報欄にあります「4. イングリッシュ スプーン パターン」の解説記事もご参考ください。

ボール部分の裏面にはブリティッシュ ホールマークが、どれもしっかり深く刻印されているのもよいでしょう。 ホールマークは順にTurner & Simpsonのメーカーズマーク、バーミンガム アセイオフィスのアンカー、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1962年のデートレターになります。

写真の品が作られた1960年代は、英国に古きよきシルバースミスの伝統が残っていた最後の頃にあたっているように思います。

ヴィクトリアンやエドワーディアンが多い英吉利物屋の扱い品としては、比較的近年の銀になりますが、それでも半世紀を越える年月が経っております。 イギリスで古い銀製品を探していると、1960年代の品には思うように巡り会えないようです。 英国の停滞期と重なっていることが、その理由ではないかとみています。 英国シルバーの近現代史において中抜けした時期にあたっており、その意味でレアもの銀という範疇に入ろうかと思います。

これまでも大切に扱われてきたようですが、こうして半世紀が経ち、一世紀が経っていくのだろうなと見ております。 英国の伝統をよく踏まえた銀でありますが、そうでなくとも品のよいフォルムは十分に美しく、磨きぬかれたソリッドシルバーの輝きを楽しむのも、またよいのではと思わせてくれるシルバースプーンです。

お客様から、なるほどと思わせていただいた銀スプーンのお話がありますので、ご紹介させていただきましょう。 
『先日北海道では珍しい大型台風が通過し、短時間ですが停電となってしまいました。 夜、仕方がないので古い灯油ランプを持ち出し屋内の照明としたのですが、以前手配いただいたティースプーンをランプの光にかざしてみたところ、ほの暗い明るさの中、スプーンのボウル内や彫刻の輝きにしばし見とれました。 銀のアンティークには点光源の古い照明が合うようです。 また昔の貴族が銀器を重用したのもうなずける気がします。』

私はアンティーク ランプ ファンで、早速に試してみたのですが、シルバーにアンティークランプの灯がほんのりと映って揺れているのを見ていると、なんだか心が落ち着くものでした。

もう一つ、銀のスプーンをお求めいただいたお客様からのご感想です。

『さて、実際に手に取ってみると、なかなか素敵な物です。銀だから価値があるというより、これだけの年月を経て、なおちょっとしたお手入れをするだけで、作られた当時とほとんど同じ状態で使い続けられるという点の価値はすごいと思います。まとめ買いした安いスプーンがいつの間にかどこかにいってしまったり、曲がったりすり減って黒くなり、何回も買い直していることを考えると、世代を超えて使われる銀器は節約の象徴のような気もしてきます。』

銀をお手入れしながら使っていくことの意味について、まさにわが意を得たりというコメントでありましたので、ご紹介させていただきました。

ハノーベリアン パターン with ラットテール スターリングシルバー ティースプーン


No.20097 ジョージ三世 スターリングシルバー オールドイングリッシュ パターン ティースプーン
長さ 13.4cm、重さ 12g、ボール部分の長さ 4.3cm、最大横幅 2.5cm、ボールの深さ 0.6cm、柄の最大幅 1.25cm、1798年 ロンドン、Samuel Godbehere & Edward Wigan作、一万一千円

このスターリングシルバー ティースプーンは、今から220年前の1798年作で、世界史で言えばフランス革命の頃にあたりますので、英吉利物屋の扱い品でもかなり古い品になります。

二世紀以上前にはティースプーンとして使われた品ですが、全長が13.4センチにボール部分の長さが4.3センチもあり、現代的な感覚からはティースプーンとしてはかなり大きいので、デザートスプーンやジャムスプーンとしてもお使いいただけるでしょう。 また、実際にお茶の席でティースプーンとして見かけると、その存在感が印象的で、裏面のブリティッシュホールマークとあわせて、珍しくて話題性のあるアンティークとなります。

写真二番目に見えるホールマークは順に、ジョージ三世の横顔でデュティーマーク、1798年のデートレター、そしてスターリングシルバーを示すライオンパサントになります。
メーカーズマークは見えませんが、もともと複数本のセットであることから、Samuel Godbehere & Edward Wiganと推定、間違いないでしょう。

二十一世紀に入り2018年ともなった今日から振り返ると、1900年代の品でもなく、1800年代の品でもない、1798年に作られているのは、やはり飛び切り古いアンティークという気がします。 そして、博物館に飾られるようなアンティークシルバーはいざ知らず、私たちが収集していけるアンティークシルバーウェアとしては、その出現頻度には1780年辺りにボーダーラインがありますので、その意味でも写真の銀スプーンの古さは一級品といえましょう。

英国の歴史は比較的安定していたことが特徴で、隣国フランスのように大きな革命や動乱を経験せずに今日に至っており、そのおかげもあってイギリスにはアンティークのシルバーが多く残っているとも言えます。 しかし、この銀のスプーンが作られた時代は、イギリスにおいてもかなり世の中が荒れて、政治が混乱した時代でした。 

一つには産業革命の影響で英国社会に大きな変化が起こりつつあって、ロンドンでは打ち壊しのような民衆暴動が頻発していたことがあり、二つには国王ジョージ三世がアメリカ植民地経営に失敗してアメリカ独立戦争を招いたことなどが混乱に拍車をかけました。 

18世紀後半にロンドンで起こったゴードン暴動では死者が五百人を超える惨事となって革命一歩手前だったようです。 さらに加えて海外からの不安定要因がイギリスを脅かし始めます。 1789年に始まったフランス革命は次第に先鋭化していって、ついに1793年には国王を処刑してしまうまでになりました。 このティースプーンが使われていた頃というのは、おっかなびっくり隣国フランスの様子を窺いながら、当時のイギリスはいつ対岸の火事が飛び火してくるか、ひやひやものでありました。 もし英国史がそのコースを少し外していたら、このスプーンを今こうして見ることもなかったかもしれない、などと思ってみたりもするのです。

それから、柄先にホールマークを刻印することをトップマーキングと言いますが、1800年前後にロンドンで作られたティースプーン等の小物シルバーウェアのトップマーキングにおいては、ロンドン レオパード ヘッドの刻印を省略することが当時流行っていました。 このティースプーンにもロンドン アセイオフィス マークがありませんが、同時期に作られたロンドン物ではよく見かける傾向なのです。 おそらくロンドン中心思考がこうした習慣を生んだと思われますが、1830年ぐらいから以降は改まりきっちり刻印されるようになっていきます。

ジョージ三世 スターリングシルバー オールドイングリッシュ パターン ティースプーン(英国 アンティーク シルバー 英吉利物屋)ジョージ三世 スターリングシルバー オールドイングリッシュ パターン ティースプーン(英国 アンティーク シルバー 英吉利物屋)





No. 20098 アール・デコ Good Luck ホースシュー ネイル スターリングシルバー ティースプーン SOLD
長さ 10.7cm、重さ 10g、最大幅 2.45cm、柄の最大幅 9.5mm、Ethel Mary Ventress作、1939年 シェフィールド アセイオフィス、一本 四千円(6本あります-->SOLD)

グッドラック ホースシューネイル デザインの純銀ティースプーンです。

イギリスではホースシューがグッドラック アイテムとされますが、そのホースシューを打ち付ける釘も、グッドラック アイテムとされていて、ホースシューネイルを使ったアートの分野があります。

写真のティースプーンは、アール・デコの時代に登場した、そうした分野の一つに位置する銀製品です。

グッドラック ホースシュー ネイル デザイン スターリングシルバー ティースプーン(英国 アンティーク シルバー 英吉利物屋)グッドラック ホースシュー 釘グッドラック ホースシュー


No. 20085 『LOOK FORWARD (前を見よ)』 スターリングシルバー ティースプーン with ブリティッシュ シルバー ホールマーク SOLD
長さ 10.9cm、重さ 14g、ボール部分の長さ 3.5cm、柄先の飾り直径 1.9cm、1922年 シェフィールド アセイオフィス、一本 四千円 (5本あります-->SOLD)

今から百年近く前に作られたスターリングシルバーのティースプーンです。 かなりな古さの銀ではありますが、コンディションがよろしくて、綺麗なアンティーク シルバーと感じます。 同様なタイプの銀スプーンがあと五本あります。

柄先の飾り部分は直径は2センチほどありゴージャスな雰囲気に仕上げっています。 この飾り部分の大きさもあって、銀が多めに使われていることから、持ちはかりは14グラムと、けっこうな銀の重さになっているようです。

英国ライフル協会の関連アンティークと思われ、ハンドル表側の中ほどには『LOOK FORWARD (前を見よ)』という言葉のレリーフがあります。 「LOOK FORWARD」というポジティブな言葉の響きに好感が持てました。 

写真三番目に見えるように、ボール裏面には四つのブリティッシュ ホールマークが刻印されています。 ホールマークは順にメーカーズマーク、シェフィールド アセイオフィスの王冠マーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そしてデートレターです。 

それから、柄の裏面に見える数字はデザイン登録の番号で、「RD No. 502958」とあります。 イギリスのパテントオフィスに登録して、特許を取ったことが示されています。

写真のアンティーク シルバーの作り手が、このデザインをパテント登録オフィスに持ち込んで、わざわざ特許申請をしていることから考えても、ほぼ一世紀の昔に、自信を持って世に送り出した意匠の一つだったろうと理解できます。

写真の品の場合はブリティッシュ シルバーホールマークの刻印がありますので、製作年の特定が出来るわけですが、このデザイン登録番号をたどっていっても、やはり1922年から数年前の登録年にたどり着けるはずです。 このアンティーク シルバーには製作年を示す手掛かりが多く残されており、こういうことが可能なのは、過去資料の整っている英国アンティークならではの面白さの一つでありましょう。

英国でアンティークという言葉を厳密な意味で使うと、百年以上の時を経た品物を指します、そして百年もので素晴らしいアンティークはそうはないものです。 この品はもうすぐ‘アンティーク’になろうという古さで、時の流れを感じさせてくれますし、ほぼ未使用と思われるコンディションの良さもポイントになっています。 気に入った古いものを使っていくうちに、自分の手元で‘アンティーク’になっていくことはコレクターの喜びとも言え、このシルバースプーンにはそんな楽しみ方もあろうかと思います。

『LOOK FORWARD (前を見よ)』 スターリングシルバー ティースプーン with ブリティッシュ シルバー ホールマーク(英国 アンティーク シルバー 英吉利物屋)『LOOK FORWARD (前を見よ)』 スターリングシルバー ティースプーン with ブリティッシュ シルバー ホールマーク(英国 アンティーク シルバー 英吉利物屋)











No.20060 英国王 エドワード八世 戴冠記念 スターリングシルバー with ゴールドギルト アノインティング スプーン
長さ 10.8cm、重さ 15g、最大幅 2.3cm、柄の最大厚み 3.5mm、1936年 バーミンガム アセイオフィス、一万一千円

興味深いアンティークが入りましたので、ご紹介しましょう。 英国王 エドワード八世 幻の戴冠 記念 アノインティング スプーンです。 エドワード八世のコロネーション(戴冠)を記念するはずだった品であること、そしてエドワード八世の在位期間は一年に満たなかったことから、エドワード八世ものは、この銀のスプーンに限らず、アンティークとしてはレアものの範疇に入ることから珍重されます。

国王の即位式で使われるクラウンジュエリーの一つにアノインティング スプーンがあり、コロネーション(戴冠式)を記念して、それを模したスプーンが作られました。 オリジナルのアノインティング スプーンは12世紀から伝えられてきた英王室の三種の神器のような品であって、戴冠式で新国王に聖油をつけるのに使われます。

アノインティング スプーンのオリジナルは英王室の宝物としてロンドン塔に保管されておりますが、『倫敦塔』といえば夏目漱石の作品にありますので、あわせて読まれると興味深いと思います。

柄の側面部分には四つのブリティッシュ ホールマークが刻印されており、順にメーカーズマーク、バーミンガム アセイオフィスのアンカーマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1936年のデートレターです。 写真二番目では、柄の側面部分に四つのホールマークが並んでいるのがご覧いただけます。

素材のスターリングシルバーにゴールドギルトが施してあって、ゴージャスな仕上がりになっています。 15グラムという持ちはかりは、このタイプのアノインティング スプーンとしては、重たい方になります。 銀がしっかり使われて作られていることを示しています。

柄の厚みは丸飾りの辺りが最大で3.5ミリほどあって、ボール部分の銀も厚めに作ってあって、持った感じのしっかりしたスプーンと思います。 上から見た写真では立体的な構造が分かりにくいのですが、ボール部分は一段低く、柄の部分がせり上がったかなり立体的な構造に出来ています。 

1936年は「王位を賭けた恋」で有名な英国王エドワード八世即位の年にあたっており、国を挙げての祝賀ムードから記念銀器が作られたことが、このアンティークの背景になっております。 そして、在位期間があまりにも短かったエドワード八世ものは、アンティークとしてはレアものの範疇に入ります。

例えてみると、阪神タイガースの優勝を見越して記念グッズを作っていたら、土壇場で阪神は優勝を逃してしまい、困ってしまった業者さんの事情とよく似ています。 エドワード八世は国王に即位したけれども、国民をあげて盛り上がっていく戴冠式を前に退位してしまったのでした。 

まあ、それから八十年以上の年月が流れますと、幻の戴冠式に向けて作られた記念銀器が、レアものとして尊ばれるようになっております。

エドワード八世は1936年に英国王になりましたが、その年の12月には退位を宣言し、この年は英国中が大揺れとなりました。 それというのも、エドワード八世は当時41歳の独身で王位につき、英国民はさて次はお妃探しと盛り上がったのですが、彼には皇太子時代からシンプソン夫人という愛人があったのです。 シンプソン夫人はアメリカ国籍で、夫のある身、さらには離婚歴もありということで、英国国教会や当時の英国政府が黙って見過ごせることではなかったわけです。 不倫を解消せよと迫る世論に対して、国王が下した決断は王位を捨ててシンプソン夫人をとるというものでした。 

当時の新聞によりますと、英国王が王位を捨てるとのニュースによって、イギリス国民の間には外国から宣戦布告を受けたような衝撃が走ったそうです。 ロンドンのシティでは電話回線がパンクしましたし、ウエストエンドの商業地でもこれまた機能不全に陥って、人々は夕刻の号外を奪い合い、バッキンガム宮殿に出入りする王族を一目見ようと殺到し、ロンドンは蜂の巣を突いたような騒ぎとなったのでした。

エドワード八世は、アメリカや日本を含めた諸外国では、「王位を賭けた恋」を成就させた王様として人気があります。 彼は晩年に至るまで一度も自らの決断を後悔したことはなかったと伝えられています。

ちなみにヴィクトリア女王の時代が終わって20世紀に入ってからの英国王は、1901年のエドワード七世、1910年のジョージ五世、1936年のエドワード八世、1937年のジョージ六世、そして1952年から現在のエリザベス二世になります。

ついでながら、『エッジウェア卿の死』(アガサ・クリスティ作)をご存知でしょうか。 英国国教会の離婚に対する考え方が、重要な作品背景となっていて、クリスティーはこの小説を1933年に書いております。 エドワード八世とシンプソン夫人の交際は1931年から続いていたので、この問題でますます英国国教会と、もめるだろうと分かっていたことでしょう。 おそらく、そんな王室事情もヒントになって、書かれたミステリーなのだろうと思うのです。

実際に起こった王室問題と、クリスティのミステリー小説、やはりどちらか一方よりも、あわせて親しむと、八十年前の人々の考え方がよりよく分かってきますし、歴史やアンティークに対する理解が深まるように思います。

英国王 エドワード八世 戴冠記念 スターリングシルバー with ゴールドギルト アノインティング スプーン


No. 20059 ヴィクトリアン スターリングシルバー  ティースプーン Queen Anne パターン with シェル
長さ 11.7cm、重さ 12g、ボール部分の長さ 3.8cm、最大幅 2.5cm、ボールの深さ 6mm、柄の最大幅 1.3cm、1890年 ロンドン、George Unite作、七千円(3本あります)
SOLD







No. 20049 アール・デコ スターリングシルバー ティースプーン with ピアストワーク SOLD
長さ 10.8cm、重さ 10g、ボール部分の最大幅 2.3cm、透かし柄の最大幅 1.3cm、1943年 バーミンガム、 (6本あります-->3本あります-->SOLD)

アール・デコ スターリングシルバー ティースプーン with ピアストワーク




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