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38. シルバーアンティークのお手入れと ホールマーク解説書について

知り合いのイギリス人に銀のヴィクトリアン ウォッチチェーンを二つ繋いでネックレスにしている方があります。 その方の好みは、シルバーアンティークはお手入れが過ぎない方がよろしいというもので、ウォッチチェーンには銀の黒ずみが出ており、古びた風合いが感じられます。

そう言われてみると、そんな銀の扱い方がかっこいい気もしてくるもので、たしかにイギリスにはあまりピカピカに磨かずに、銀の渋い色味を楽しみたいという人たちが多いようにも思います。 

お好みの問題となりますが、お手入れするかしないか、難しいところであります。 そして、私はといえば、銀の渋い味わいをと思いながらも、やはりついつい磨いてしまう方なのです。

『The Victorian House(Judith Flanders著)』という本に、毎週金曜日は銀磨きの日という記述があって、ヴィクトリア時代の暮らしはのんびりしているというか、優雅なものだなあと読みました。 でも、よく考えてみると、当時は銀をよく磨いていたのではないかとも考えられるわけで、今日のイギリス人が時折見せる渋い色味の銀好みというのは、歴史を経て世の中や人々の考え方の成熟というか、枯れというか、そういうものと関係していそうにも思うのです。

こんどは日本のお客様から、なるほどと思わせていただいたお話がありますので、ご紹介させていただきましょう。 
先日北海道では珍しい大型台風が通過し、短時間ですが停電となってしまいました。夜、仕方がないので古い灯油ランプを持ち出し屋内の照明としたのですが、以前手配いただいたティースプーンをランプの光にかざしてみたところ、ほの暗い明るさの中、スプーンのボウル内や彫刻の輝きにしばし見とれました。銀のアンティークには点光源の古い照明が合うようです。また昔の貴族が銀器を重用したのもうなずける気がします。

私はアンティーク オイルランプのファンで、早速に試してみたのですが、シルバーにアンティークランプの灯がほんのりと映って揺れているのを見ていると、なんだか落ち着くものでした。 こんなふうに磨きぬかれたシルバーの輝きを楽しむには、やはり銀磨きが必要になってきましょう。

さらに言えば、少し変かも知れませんが、私は銀のスプーンやクロスなど磨いていると、心が和み、いつの間にか時が経つのも忘れて、夢中になっていることがよくあります。 シルバーアンティークが好きな方にとって、銀磨きという作業には、忙しい日常から少し離れて、無心になれるひと時を与えてくれる効果があるようにも思うのです。

それでは、銀のお手入れの実際について、もう少しご説明いたしましょう。 そうは言っても、シルバーのお手入れはそれほど難しいことはありません。 銀器のお手入れについては一番の方法は毎日使うことと言われます。 実際のところは毎日使わなくとも、週に一、二回も使っていれば大丈夫でしょう。

しばらく使わないでいるとシルバーの色が変わってきますが、銀磨き液につけて一拭きすれば、簡単に元通りのシルバーの光沢を取り戻せます。 また、もっと簡単な普段のお手入れには、銀磨き布がよいと思います。 シルバーポリッシュ専用の布が市販されておりますので、これで軽く磨いていただくといつもピカピカにシルバーを保てます。

私はあまり日本の事情に詳しくないので、他にもあるのかも知れませんが、専用の銀磨き液と銀磨き布は、ハガティ社製の品が東急ハンズに売っているとのこと。 またインターネットを通じても購入できるとお客様から聞いたことがあります、お試しください。

銀磨き液はもう一つありました、Goddard's Silver Dipという製品です。 どちらでも違いはないと思いますが、私は普段 Goddard'sを使う方が多いです。

次に銀磨き液を使ったお手入れの具体例について、ご覧いただきましょう。
写真の純銀ボタンは、今から百年以上前のエドワーディアン アンティークです。 お手入れ前の様子で、銀の渋い色味の実例になります。

ちなみに、この品のモチーフは三叉の矛を武器としてシェルにのったギリシャ神話の海神ポセイドンです。 英語のNeptune(=海王星、or ネプトゥーヌス)はローマ神話の海神ネプトゥーヌスからきていますが、ポセイドンとネプトゥーヌスは同じ神様です。

シルバーアンティークのお手入れと ホールマーク解説書について(英国 アンティーク シルバー 英吉利物屋)

奈良の大仏のすす払い(お身拭い)ではありませんが、銀磨き液を使ってお手入れしてみたら、積年の黒ズミが綺麗になりました。 この銀ボタンが作られたのは1905年のことですので、おそらく百年ぶりにお手入れされたと言うことになりましょう。 お手入れ前と比べてみると、様変わりな銀の光沢の美しさがお分かりいただけると思います。

シルバーアンティークのお手入れと ホールマーク解説書について(英国 アンティーク シルバー 英吉利物屋)

もう一つ、銀のスプーンをお求めいただいたお客様からのご感想です。

『さて、実際に手に取ってみると、なかなか素敵な物です。銀だから価値があるというより、これだけの年月を経て、なおちょっとしたお手入れをするだけで、作られた当時とほとんど同じ状態で使い続けられるという点の価値はすごいと思います。まとめ買いした安いスプーンがいつの間にかどこかにいってしまったり、曲がったりすり減って黒くなり、何回も買い直していることを考えると、世代を超えて使われる銀器は節約の象徴のような気もしてきます。』

銀をお手入れしながら使っていくことの意味について、まさにわが意を得たりというコメントでありましたので、ご紹介させていただきました。

最後にお手入れしたシルバーアンティークを、さらに楽しむ為の書籍を一つご紹介しておきましょう。

英国アンティークシルバーにおけるホールマークの基本については、アンティーク情報欄にあります「スターリングシルバー ホールマーク と ジョージアンの国王たち」の解説記事をご覧いただくとして、これらホールマークの解説書というものがあります。 イギリスのAntique Collector's Clubが出版している「Pocket Edition, JACKSON'S HALLMARKS」という本がお薦めで、インターネット書店を通じて購入可能と思います。

イギリスのアセイオフィスのホールマークが年代順に網羅してあり、メーカーズマークもかなり分かります。暗号ブックのような書物ですが、イギリスのシルバーアンティークをお持ちでしたら、一冊あると楽しみが増えそうに思うのです。


(追記)
お客様から多くのコメントをいただきありがとうございます。
その中から二つほど、以下にご紹介させていただきます。

『毎回興味あるアンティークの記事を配信していただき有り難うございます。とても楽しく拝見しています。すでに10数年前になりますが、インド、ニューデリーに夫の仕事の関係で4年滞在。その間に、インドの数多い珍しい品々に魅了され、まさに飛び回って見て歩き、楽しみました。その楽しみの中には、もちろん銀製品もありました。長く英国に統治された国ですからイギリスが残した物は数多くあるのです。アンティーク専門のシルバー・ショップにはヴィクトリアの刻印がなされたティーセットなどもありました(手が届かないお値段でした)。わたしが簡単に入手できるものとしては嗅ぎタバコ入れなどの小物でした。ある藩主国のボールルームの古い鍵も買いました。何の役にもたたないけれど、夢があります。今回お手入れ方法をお聞きして、しばらく忘れていて黒くなったものを手入れしなくてはと、啓発してもらった形になりました。先日東急ハンズで銀ポリシャー用の布を買ったことですし。』

ニューデリーでの暮らしは貴重なご経験だったと思います。 私はロンドン、香港、そしてまたイギリスとまわっておりますが、それぞれに違った文化圏で得難い経験になっています。 アンティーク コレクションのメンテナンスにお役に立てれば幸いです。


『本日、HPを見させていただきました。
銀の手入れですが、私は布でからぶきが好きです。
陰影が残り、立体感が強調されてよいように思っています。』

陰影が残り立体感が楽しめる布で乾拭きというのは、お手入れするかしないか二者択一の中間をいく方法で、興味深い第三の方法かも知れません。 皆様もお試しいただければと思いました。

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