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No. 20220 オックスフォード大学出版 オリーブの木 エルサレムクロス 新約聖書
縦 12.0cm、横 7.8cm、厚さ 2.1cm、重さ 154g、1943年 英国製、総ページ数 384ページ、Printed at the University Press, Oxford、一万二千円

表紙と裏表紙はオリーブの木で、厚みが4ミリほどもある板なので、かなりしっかりした装丁です。 製作は「British and Foreign Bible Society」になり、1943年に Oxford の University Press で印刷されています。 

オリーブの板にカービングされているクロスの集合体はエルサレム クロスと呼ばれます。 中央の大きなクロスを座標軸と見立てると、第一象限から第四象限まで、それぞれに小さなクロスが入っている格好です。 これらの小さな四つのクロスは、イエス・キリストの言葉が世界の四方へ広まって行った様子を示しているとされます。

このエルサレム クロスは、あるいはクルセーダーズ クロスと呼ばれます。 11世紀の終りに第一回十字軍がセルジュクトルコに侵攻して、エルサレム王国や十字軍諸国家を建設した当時より、十字軍(Crusader)旗印に使われてきたクロスであるからです。

写真三番目にあるキングからのメッセージは日付が1939年9月15日になっているので、現女王エリザベス二世の父君にあたるジョージ六世からの序文になります。

「王位を賭けた恋」で有名なエドワード八世が劇的な退位を遂げた後に、急遽1936年に英国王になったのがジョージ六世でした。 ご本人も自分が国王向きなパーソナリティーであるとは思っていなかったようで、それまでに国王になる準備がまったく出来ていなかったこともあって、初めのうちは周囲からも大丈夫だろうかと心配されました。 ところがその後の対ドイツ戦争中に、側近たちがバッキンガム宮殿からの疎開を進言したのに、それを拒んで、爆撃を受けるロンドンから執務を続けたことで、国民の人気が上がりました。 戦争中のロンドンはしばしばドイツの爆撃機が来たり、さらにはV1やV2と呼ばれるミサイルまでもが飛んでくる危険な状況でありました。 そんな中でロンドンにあって英国民を鼓舞し続けたジョージ六世の評価が上がったのは当然と言えば当然でしたが、さらには王妃や子供たちを大切にする理想的な家庭の夫であったことも、「良き王」として英国民の尊敬を集める理由となったのでした。

中表紙には新約聖書がイギリスで作られた経緯が説明してあって、「Translated out of the Original Greek : and with the former Translations diligently compared and revised by His Majesty's special command A.D.1611.」とあります。 英国における聖書翻訳の略史ともいえる記述で興味深く思います。

多色刷りでないのは対独戦争中という当時の時代状況を反映しているのかも知れません。 1943年ごろのイギリスはドイツに押されて大変でした。 その品が作られた時代を映す手掛かりが隠されているアンティークには、私はとても興味を惹かれます。

英国は戦勝国とはなったものの、大変な時期であったことは間違いありません。 ロンドンはドイツから弾道ミサイルの攻撃を受けたり、爆撃機による空襲も頻繁にありました。 私の住むところはロンドンの北の郊外で爆撃の目標にはならなかったようですが、近所のお年寄りの話では、ロンドンを空襲した帰りの爆撃機が、残った爆弾を抱えていると重いので、帰路の燃料節約の為に落とし捨てていくコースに当たっていて、怖かったとのこと。 

オックスフォード大学出版 オリーブの木 エルサレムクロス 新約聖書

オリーブの木 エルサレムクロス 新約聖書








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