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No. 20087 『オセロー』 アーツ・アンド・クラフツ 布張り装丁 チズウィック・ プレス ヴィクトリアン シェイクスピア シリーズ
縦 15.4cm、横 10.4cm、厚さ 1.1cm、143ページ、重さ 170g、1899年 George Bell & Sons ロンドン、Chiswick Press 印刷、一万二千円
いわずと知れたシェイクスピアの名作 『オセロー』のヴィクトリアン アンティーク本になります。
英国BBC製作テレビシリーズの一つである『オセロー』 を手助けにして、ヴィクトリアン・アンティーク本を読んでみるのも面白いと思います。 百年以上の古さを持ったアンティークなテキストは、ちょっと立派過ぎるかも知れませんが、英語シェイクスピアの鑑賞&学習、まずは形から入るやり方もありでしょう。
主演がアンソニー・ホプキンスで、彼がオセロー役を演じているのは、大いなる見所と思います。 『羊たちの沈黙』のレクター教授であり、『日の名残り』の執事スティーヴンスなわけですが、やっぱり名優さんで見てよかったです。お薦めしたいと思います。 BBCの『オセロー』は、アンソニー・ホプキンスが『羊たちの沈黙』でアカデミー主演男優賞を取るより十年前の作で、彼のキャリアとしては比較的早いころの作品になります。
シェイクスピアは名言の宝庫で、現代に到るまで様々な形で広く引用されてきておりますので、どこかで出会った覚えがあるような胸に響く言葉が多いものです。
例えば『オセロー』から離れますが、『マクベス』 第四幕最後でのマルカムの台詞、
「The night is long that never finds the day. (この世に明けぬ夜はない。)」なんていうのは、シェイクスピア劇から切り離しても立派に通じる名言と思います。
ちなみに、アンティークな坪内逍遥訳では 「永久に明けないと思えばこそ夜が長いのである。」
使ってみたい言葉ですが、これがまた英語で口ずさむと、なんとも語呂がよい。 このあたりに、本来が英語の作品であるシェイクスピア劇を、英語のまま鑑賞する意義があるようにも思います。
モスグリーンの布張り装丁には、アーツ・アンド・クラフツのチューリップ & フォーリッジ インターレーシング パターンが映えます。 印刷元のチズウィック・プレスは、ウィリアム・モリスの初期デザインを世に知らしめたことで名を成して、イギリスにおける印刷の歴史に大きな足跡を残しました。
また、挿絵を描いている Byam Shaw はヴィクトリアン後期からエドワーディアンの頃に活躍したラファエル前派からつらなる画家で、シェイクスピアの挿絵画家としても人気がありました。 1910年には Byam Shaw School of Arts を創立しています。 現在ではこのアート・スクールは芸術分野において世界でも有数なロンドンの芸術大学である Central Saint Martins の一部になっています。
本文および用語解説の本体部は143ページありますが、それ以外に巻頭部には挿絵とイントロダクションが十ページほどあって、その後に登場人物説明、そして本文にあたる第一幕が始まっていきます。
写真三番目は第一幕の始まり部分で、合計五幕構成の各幕始めにはそれぞれに違っていて楽しめるちょっとした挿絵があります。 その他に写真四、五のような大きな挿絵が合計六ページあるのも嬉しいところです。
最終幕の後に写真六番目のような挿絵と『The End』が見えます。 さらにその後に続いているのが、「Glossary and Notes」の巻末用語解説で、六ページあって昔の用語について参考になります。
それから、私が使っているシェイクスピア読解法を一つご紹介しておきましょう。 やっぱり一番簡単なのは、まず映像で見ることではないかと思います。 例えば最近『The Tempest』、The Shakespeare Collectuin、BBC版を見ました。 1970年代後半にイギリスのBBCがシェイクスピアの作品をテレビ化した一連の作品集のDVDが出ています。 せりふはシェイクスピアの台本通りですし、字幕も出ることから、少しの時間で一通りの理解は進みます。 映像で見終わってから、あらためて書物を紐解くと、初めは難しく思えたシェイクスピアの原典も意外に早いこと読めるものです。
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