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No.20071 エルキントン アール・ヌーボー リリーパターン ヴィクトリアン シルバープレート テーブルフォーク with コート オブ アームズ(ウィング紋章) 一部 SOLD
長さ 21.6cm、重さ 74g、柄の最大横幅 2.7cm、柄の最大厚み 4mm、1879年 エルキントン作、一本 七千円(10本あります-->8本あります-->5本あります)

このアンティークを見る五つのポイント
一、明治新政府の岩倉使節団が訪れた有名銀工房エルキントン製
二、アール・ヌーボーの先駆けとなったリリーパターン
三、1879年作と特定できること
四、柄先に彫られたウィングの紋章
五、相当量の銀が使われていること。


かなり大きなアンティーク フォークです、現代的な使い道としてはパーティーのときのサーバーとされるのもよいでしょう。

素材は厚めで質感があり、すべてしっかり出来たところが好ましい、おすすめ出来るヴィクトリアン シルバープレート テーブルフォークです。 そして、アール・ヌーボーの時代を先駆けたリリーパターンというのはやはり大きなポイントでありましょう。 

写真四番目をご覧いただくと、エルキントンのマークが並んでおりますが、左から二つ目に見える四角に「T」のマークが、1879年作であることを示す刻印で、これはエルキントン独自のデートレター システムによっています。 シルバープレートの品においては、その大半が、もっと言えばおそらく99%以上の品では、製作年を特定することは出来ません。 エルキントンの品であっても、デートレターのある場合と、ない場合があります。

そうした事情にあって、1879作と特定できる写真のフォークは、アンティークとしてめったにない優れた特徴を有していると言えましょう。
歴史年表を眺めると、1879年 エジソンが電球を発明とか、1877年 西郷隆盛の西南戦争など、かなり古いと分かります。

長さが22センチほどあります、まあ、本当に大きいです。 ヴィクトリアンのテーブルフォークはこんなにでっかいのかとビックリするのもアンティークの楽しみでありましょう。


エルキントンについては、以下もご参考ください。

エルキントン社のシルバープレート技術と明治新政府の岩倉使節団
Punch:1873年2月2日号』 ヴィクトリアンの英国を伝える週刊新聞


ゆりモチーフのレリーフが華やかで、その優雅な曲線デザインが目を惹きます。 両面に見えるデザインの特徴から「Lily pattern(ゆりパターン)」と呼ばれます。 キングスパターンやフィドルパターンといったメジャーなパターンではなく、マイナーパターンの一つなので、アンティーク シルバーウェアの参考書では紹介されることがあっても、実際に見かける頻度はそう多くありません、その意味でもレア物アンティークの一つ言ってよいでしょう。 

アール・ヌーボーの歴史を紐解くと、ゆりデザインは大きな役割を果たしてきました。 「Lily pattern(ゆりパターン)」は、エルキントンという有名どころのシルバースミス(銀工房)が、1850年に考案しデザイン登録したのが始まりです。 そしてChawner & Co.のパターンブックでは 「Lily pattern」と名前が付けられて、世に知られるようになった経緯があります。 ヴィクトリアン中期のNaturalism(自然主義)を代表するデザインで、アール・ヌーボーにダイレクトな影響を与えたデザインと言われます。

柄先にはウィングの紋章があり、どこかのマナーハウスで使われていたものと思います。

紋章の基礎知識について、少しお話しましょう。 一般に紋章はコート オブ アームズと言うのが正式です。 クレストという言葉もありますが、クレストとは紋章の天辺にある飾りを言います。 紋章の各部分の名称として、例えば英国王室の紋章の両サイドにいるライオンとユニコーンの部分をサポーターと言い、中央の盾状部分をシールドまたはエスカッシャンと言います。 さらに細かく言うと、写真のフォークに刻まれた紋章では下に棒状の飾りが見えますが、これはクレストの台座であって、リースと呼ばれます。

ただし、紋章のすべてを描いて使うのは、大掛かり過ぎるので、その一部をもって紋章とされることも多く、中紋章とか大紋章という言い方もあります。 しかし、その区別は厳密でないので、紋章の一部をもってコート オブ アームズという言い方をしても差し支えありません。

コート オブ アームズ(=紋章)を使っていた人々とは、どういう階層の人たちであったのか、考えてみました。

コート オブ アームズの体系化や研究は、イギリスにおいて九百年ほどの歴史を持っており、紋章学(Heraldry)は大学以上の高等教育で学ぶ歴史学の一分野となっています。 中世ヨーロッパにおいては、多くの国々に紋章を管理する国家機関がありました。 今ではなくなっているのが普通ですが、面白いことにイギリスでは紋章院がまだ活動を続けています。

今日のイギリスは品のよい国のように見られることが多いですが、その歴史を紐解きますと、節操のないことで名高い時代も長くありました。 キャプテン・ドレークは世界を航海して略奪をきわめて、当時の国家予算に匹敵するほどの金銀財宝を奪って帰ってきたので、エリザベス一世から叙勲を受けました。 お金がすべてという傾向は、紋章院においてもあったようです。

紋章学や紋章院の働きについて書かれた本が、『HERALDRY IN ENGLAND』(Anthony Wagner著、Penguin Books、1946年刊)です。

この本によりますと、紋章院が認めてきたコート オブ アームズは四万あるとのこと。
一方で英国の王侯貴族にあたる家柄は千足らずとなっています。

この数字のバランスから分かることは、第一にコート オブ アームズは王侯貴族だけのものではないこと。 第二に、そうは言っても、代々伝わるコートオブアームズがある家系は、英国の中でも数パーセントに過ぎず、その意味で日本における家紋とはだいぶ違っていること。

産業革命が進行して、新興富裕層が厚くなってきたのがヴィクトリア時代の初め頃になります。 当時の富裕層はコート オブ アームズを求めましたし、また求めれば手に入る性質のものであったようです。



フォークについて言いますと、普段使いで純銀製のフォークをお使いいただくと、歯先が曲がったりして、残念なことが起こりがちであります。 

銀という素材はやわらかく、スターリングシルバーは銅を混ぜて100%銀よりはずいぶんと硬い素材にはしてあるのですが、それでも、フォークの歯先やナイフの刃先として使うには、まだ強度が足りず、よほどの注意が必要になってきます。 そのあたりが、スプーンに比して、ナイフやフォークに全銀製が少ない理由となっています。

エルキントンのこのレベルの品では、テーブルスプーン一本あたりに2gから3gの純銀を使って、エレクトロプレートが施されています。 小さな純銀インゴット型ペンダントヘッド一つで、テーブルスプーン二本程度の割合ですので、エレクトロシルバープレートとは言っても、相当量の銀が使われているなあと、私は感じます。 そのことは手にとって眺め、触ってみると、実感として伝わってきます。 

加えて、実際のところ、歯先は硬いので、気にしながら使う必要はなく、普段使いには最適だろうと見ております。

なんといっても、英国シルバープレート品にあって、エルキントンはビックネームなので、贔屓目もあるかも知れませんが、裏面のメーカーズマークも格調高く、やはりシルバープレートの仕上がりもよいですし、メーカーのよさを感じます。

アンティークとしてかなり見所の多いよい品と、私は思っているのですが、お求めいただいたお客様から、実際に使ってみてのご感想をいただきました。 掲載許可をいただきましたので、ご参考ください。

以下がお客様からのご感想です。

『リリーパターンのフォークを見た時にはこれだと思ったのです。 対のテーブルウェア、それも歴史のあるもの、美しいもの、見た目にも触っても心地よいもので食事をするのは、これ以上無く贅沢な時間です。 100年の季を経てもなお艶やかなフォークとスプーンは、余計な物をそぎ落としたシンプルなデザインが、その存在全体を完全なものにしているように感じます。 

もちろん、見て楽しむだけでもいいのでしょうが、使うために作られたテーブルウェア、使ってこそその良さがわかります。 当時のイギリスでパスタを食べたかどうかはわかりませんが、このスプーンとフォークで食べるパスタは格別で、偏屈な夫が珍しく「おいしい」と何度も言いました。 このスプーンとフォークのお陰ではないかと思います。 

食べる時だけではありません。 洗うときも拭くときも、置いてあるときも、歴史を見てきた先輩がうちにいるような感覚、なんとも言えません。 表だけの模様ではなく裏にもさりげなく模様があって、コストカット優先の今日ではほぼ考えられない手間と材料を使って、良い物を作ろうという心はおそらく、たとえそれが生き物で無くても時を経ても宿るものなのなのかなぁと思っています。 

大切に使います。 本当に洒落た言葉の一つも書けませんが、畑様にはいつもいつも感謝しています。 ありがとうございます。』

お客様のご感想は以上でした。  S 様 ご感想いただきありがとうございます。 私はこの品をとても気に入っており、皆様にお薦めしたいアンティークと考えております。 こういった新たな視点からのインプレッションは参考になり、皆様のお役にも立とうかと思います。 ありがとうございました。 店主


エルキントン アール・ヌーボー リリーパターン ヴィクトリアン シルバープレート テーブルフォーク ペア with コート オブ アームズ(ウィング紋章)









紋章院が認めた新規紋章の認可状、15世紀半ばの古文書
『HERALDRY IN ENGLAND』(Penguin Books、1946年刊)
#紋章学(Heraldry)の本自体もいい感じのアンティークになりつつある。
昔のペンギンブックスは趣深い。





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